心理的反応にも進化的圧力がかかる
トライポフォビア(Trypophobia)は、ギリシャ語のトライポ(空いた穴)とフォビア(恐怖症)を掛け合わせた造語で、2005年に提唱されました。
例えば、蜂の巣やハスの実のように、小さな穴や斑点の集合体に対して恐怖や嫌悪感を抱く反応を指します。
この他にもクモの目やヘビの斑点模様、それから中にはスマホの後ろについている3つのカメラレンズが気持ち悪いというケースもあります。
また近年では、ハスの実の模様を肌に貼り付ける(コラージュする)「蓮コラ」などがあり、嫌悪感や気味の悪さを引き起こすものとして一部で注目されています。
しかし、どうして穴や斑点の集合体が私たちにとってこんなにも不気味で気持ち悪いのでしょうか。
研究チームのガエタン・ティエボー(Gaëtan Thiebaut)氏らは、このトライポフォビアが人間の進化心理学と深い関わりを持っていると推測します。
進化心理学とは、現代の私たちに共通して見られる心理的反応が過去の進化的圧力によって形成されたことを提示する学問です。
こうした心理的反応は人類の進化にとって有利に働いたからこそ、子孫にも受け継がれていきます。
例えば、高いところが怖いとか、閉所が苦手という心理反応は、高所や閉所を避けることが生存に有利に働くことから人間に備わったと考えられるのです。
では、トライポフォビアを持つことはどんな役に立ったのでしょうか?
それを説明する仮説として、ティエボー氏らは2つの説を提示しました。
「危険動物仮説(dangerous animal hypothesis)」と「皮膚病回避仮説(skin disease-avoidance hypothesis)」です。