最も指を切りやすい「紙の厚さ」は?
この研究では、本や雑誌のページ、オフィス用紙、ティッシュペーパー、名刺、写真プリントなど、様々な種類と厚みの紙を対象としました。
実験方法としては、人間の皮膚を正確に模倣できるゼラチンを使った「人工指」を作製。
そこに小型ロボットを用いて、あらゆる角度で紙媒体に切り傷をつけるよう押し当てます。
そして一連の実験の結果、最も指を切りやすい紙の厚さは65μm(0.065mm)であることが判明しました。
この厚みが皮膚を切りやすい理由はその物理的な特性にあります。
65μm(0.065mm)の厚みの紙は皮膚に接触したときに、ぐにゃりと曲がってしまうほど薄くはなく、それでいて圧力が紙全体に分散されてしまうほど厚くもありません。
このバランスが紙の切れ味を最大化させていると考えられるのです。
また紙の切れ味には角度も重要であることがわかりました。
実験によると、最も指を切りやすくする紙の角度は人工指の皮膚面に対して15度で当たった場合でした。
研究者の説明によりますと、紙が15度の角度で皮膚に接触すると、適度な厚さ(65μm)であれば、曲がりが最小限に抑えられ、皮膚を切る力が効率的に集中するといいます。
そして紙を曲げずに切れ味を最大化することができたのです。
結論としてまとめると、最も指を切りやすいのは65μm(0.065mm)の厚みの紙が15度で当たったときと考えられます。
紙の厚みは同じ物でもメーカーや製品によって少し違いますが、一般的には、新聞紙が約50µm、トレーシングペーパーが約50〜60µm、雑誌のページが約70〜90µm、コピー用紙が約70〜100µmなので、この辺りの紙は皮膚に対して切れ味が高い可能性があります。
反対に、パラフィン紙(約30〜40µm)や写真用紙(約200〜250µm)などは薄すぎたり厚すぎるので、指に対する切れ味は低いでしょう。
紙でナイフを作ってみた
チームは今回の研究結果を応用して、紙を使ったナイフを試作しました。
その名も「ペーパーマチェーテ(Papermachete)」です。
(※ マチェーテとは、中南米の現地人が使う山刀のスペイン語の呼び名です)
今回の研究に基づいて65μmの厚さの紙で作られたペーパーマチェーテの刃は、実験してみた結果キュウリやピーマン、リンゴ、鶏肉まで着ることができたといいます。
ペーパーマチェーテは廃紙を利用したリサイクル可能なナイフとして商品化も期待できるかもしれません。
その一方で、包丁やナイフと違って水にとても弱かったそうなので、使い捨て用ナイフとして商品化するか、刃に防水機能を持たせる必要がありそうです。