人間も勝者敗者効果からは逃れられない
人間にも勝者敗者効果は表れるのか?
研究者たちが人間のテニス選手を対象に勝者敗者効果の検証を行ったところ、動物に非常によく似た影響が観察されました。
この研究ではテニスの第1セットのが僅差のポイントで決まったときに、つまり直前までほとんど点数差がなかった場合、第2セットの成績がどうなるかを調べました。
もし第1セットの内容が引き継がれた場合、第2セットでも点数は僅差となりやすく、一方の選手が勝つ確率は50%に収束するでしょう。
しかし結果は違いました。
第1セットで僅差の勝利を収めたプレーヤーは第2セットで勝つ確率は50%ではなく60%と高くなっていたのです。
この結果は、勝者敗者効果が連続した対戦でも発生することを示しています。
興味深いことに、このようなテニスでの勝者敗者効果が出現するのは男性プレーヤーだけであり、女性プレーヤーではみられませんでした。
また別の研究では、試合後の血中成分の分析を行うと、テニスで勝ったプレーヤーは血中のテストステロン値が上昇し、敗者は逆に低下することが示されました。
さらにバスケットボールについて調べた研究では、試合中に得点したプレーヤーは、その後のシュートの成功率が一時的に高くなることが示されました。
これらの結果は、勝者敗者効果が人間のスポーツの世界にも存在しており、直前のプレイの勝者はその後のパフォーマンスが上昇し、敗者は逆に低下することを示しており、それがホルモンのような生理学的現象によって導かれている可能性を示します。
しかし自然界やスポーツの世界では最初から選手の実力に差があり、もともとの実力差が勝者敗者効果に何らかの影響を与えている可能性もありました。
そこで最近行われた研究では実験的な環境で個体間の実力を等しくなるように調節した上で調査が行われましたが、この場合でもやはり勝者敗者効果があることが判明しました。
この結果は、勝者敗者効果があくまで勝負の結果そのものが原因であり、競争力の上下に繋がっていることを示しています。
一方で、戦いを経験しなかった中立的な個体は勝者と敗者の中間的な位置を占めていました。
では勝負に必要なのは勝ち負けの結果のみで、実力はあまり重要ではないかと言えば、そうではありません。
勝者敗者効果がない最初の戦いで勝利するかどうかは、実力によって左右されるからです。
また自然界のようなランダムな環境では初戦で負けてしまった個体同士の敗者復活戦も行われる可能性があるため、やはり実力が重要です。
敗者復活戦で勝利できれば、勝者敗者効果の恩恵を受けた状態で、次なる戦いに挑めます。
というのもこれまでの研究により、勝者敗者効果においてもっとも重要なのは直前の戦いであることが明らかになっているからです。
なので、これから勝負に挑もうとしている闘犬や戦鶏などの動物やスポーツ選手が最後の調整を行うときには、格上の選手とスパーリングをして敗北するのは避けたほうがいいと言えるでしょう。
もし大会に出場する動物なり選手が直前の練習試合でボロ負けしてしまった場合、勝者敗者効果の負の影響に捕らわれる可能性があるからです。
一方、実力的に最弱レベルの動物や選手が直近の勝負で負けてしまった場合「負け組」となる可能性もあります。
実力の低さに加えて勝者敗者効果のデバフがかかってしまうのは、最も避けたい事態と言えるでしょう。
そのような事態に陥るくらいならば、あえて「戦わない」という選択肢もあり得ます。
雑多な戦いに自ら進んで参加しなければ、勝者敗者効果のデバフを受けにくくなり、本当に自分が必要とする戦いに「中立的な存在」として挑むことができるからです。
そしてもし重要な戦いで「実力があるのに直前で負けてしまった」相手にあたった場合、大金星を挙げて、勝者敗者効果の恩恵を受けられるようになる可能性もあります。
しかし競争は、野生動物やスポーツ選手のように激しく肉体を使うものだけではありません。
たとえば趣味でやっているEスポーツや学生同士の成績の競い合いのような分野での競争も存在します。
これまでの研究では、そのような分野で人間において勝者敗者効果がどれだけ存在するのかはあまり詳しく解っていません。
そこで今回、マクマスター大学の研究者たちは、1人称視点のシューティングゲームと文章読解力の2つの分野において、勝者敗者効果が人間にどのような効果を与えるかを調べました。
調査にあたっては複数の被験者があつめられ、ビデオゲームでは1対1の対戦試合が組まれ、読解力では相手との文章の理解度が競われ初戦の勝者と敗者を確定させます。
次に勝者側と敗者側でランダムな抽選によりそれぞれ1名ずつが選ばれ、第2回戦が行われることになります。
もしビデオゲームも文章読解力も完全に実力に結果が沿い勝者敗者効果がない場合、初戦で勝ったひとが第2回戦で勝てる確率は50%を大きく超えることはないでしょう。
しかし結果は、初戦で勝ったひとが第2回戦で勝つ確率は統計的な数値を大幅に上回るものになりました。
またビデオゲームの実験でみられた勝者敗者効果は、文章読解力の実験でみられたよりも高くなっていることがわかりました。
1人称視点のシューティングゲームは相手を打ち倒し勝利するという点で、文章読解力の成績の比較よりも、より競争として生々しかったからだと考えられます。
ですが最も興味深かった点は、ビデオゲームと文章読解力でみられた勝者敗者効果は、男女両方に等しくみられた点にあります。
研究者たちは今後他の分野において、人間における勝者敗者効果がどのように現れるかを調査していきたいと述べています。
簡単な難易度で勝ち慣れてから上の難易度を目指すを繰り返すと強くなるとよく言われる流れを
研究で裏付けた感じかな
早生まれの人が人生で不利な理由これだよね
自己ゴーレム効果や自己ピグマリオン効果の様な、ある種の良くも悪くも予言の自己成就的デバフ暗示なのかもね。
前回の勝利成功体験による反復のみのコストと、敗北失敗体験による勝利への試行錯誤コストでは明らかに意思決定コストが違うもんね。
かつ
情動によるバフ・デバフが影響されるなら尚更ネガポジがブーストするもんね。
勝敗効果を例えるなら、
正解のある問題に挑むマインドか、正解があるかどうかわからない問題に挑むマインドのストレス量の違い、
または遭難時に助かる道を知っていて確信しているマインドか、知らないマインドかのストレス量の違い、が与える行動への影響。
の様なものなのかもしれんね。
この知見が妥当であるなら、負け犬根性に呪われた者にならない為に、またはそれを解呪する為には、メンターによる複数回の(設計者による)計画された失敗と、自発的試行錯誤による計画された成功による、レジリエンス力と自己効用感による達成力を獲得させる訓練・治療デザインでのアプローチが必要な事を示唆するのかもしれんね。
自分の経験則的に一度負けた後でもデバフの影響を最小化する方法がある。
敗因を分析し改善して十分な勝算を見繕った新しい自分で勝負へ出かけること