抗がん剤でアルツハイマー病を治す
開発中の抗がん剤「IDO1阻害薬」はアルツハイマー病を治せるのか?
答えを得るため研究者たちはまず、アルツハイマー病を発症するように遺伝子組み換えされたマウスを用意しました。
これらのマウスの脳では人間と同じような仕組みでアルツハイマー病を発症するため、薬の効き目を調べるのに役立ちます。
ただマウスの記憶を調べるのに人間のようなインタビューはできないため、次善の策としてマウスに迷路を解いてもらいました。
迷路を解くには道順を「記憶」していなければならないため、アルツハイマー病マウスは健康なマウスに比べて迷路を攻略するのが困難となります。
次に研究者たちはIDO1阻害薬を投与し、再び迷路を攻略してもらいました。
するとIDO1阻害薬を投与されたアルツハイマー病マウスは記憶を蘇らせ、迷路攻略が大幅にスピードアップしていたことがわかりました。
この結果は、IDO1阻害薬がアルツハイマー病マウスの脳内でのトリプトファン代謝経路の暴走を抑えた可能性を示しています。
研究者たちは近い将来、IDO1阻害薬をアルツハイマー病の治療薬にするための臨床試験に臨みたいと述べています。
もともとは心臓病を治すのに開発され、現在はED治療薬となっているバイアグラ、もともとは高血圧の治療薬として開発され、現在は育毛剤となっているミノキシジルなど、当初とは異なる機能が着目され販売されている薬は数多く存在します。
IDO1阻害薬がアルツハイマー病治療薬として認可されれば、多くの患者の記憶を取り戻すことができるでしょう。
(※記憶の取り戻しができるという事実は、アルツハイマー病患者の脳内では記憶の消滅よりも、記憶を引き出すことが難しくなっていることが主な原因である可能性を示します)