ミミズのゲノムはまるで落ちた「お弁当」のようになっている
新たな研究では、ミミズのゲノムは完全にごちゃまぜであり、近縁のゴカイならば1番染色体にあるものが10番染色体に飛んでしまっていたり、15番染色体にあった遺伝子が2番染色体に飛んでしまうなど、無秩序化を起こしていたことがわかりました。
もし生物のゲノム全体をお弁当とするならば、具材が仕切りの垣根を飛び越えて、シャケが焼き物ゾーンから佃煮ゾーンに入り込んだり、ごはんが卵焼きゾーンに入り込んでいる状態と言えるでしょう。
研究者たちは「ミミズのゲノムは広範に改変されており、先祖の海洋生物にあったマクロシンテニーが完全に失われていた」と述べています。
一方で、このようなゲノムの混乱は、遺伝子の改変や新規遺伝子の誕生につながった可能性もあります。
実際分析では、かつては別々の染色体にあり隔絶していた遺伝子たちをくっつけたり、あるいは隣り合って連鎖するように動いていた遺伝子を別々の染色体に引き離した形跡が発見されました。
お弁当の具材が仕切りを飛び越えてシャッフルされることで、ごはんとショウガが入り交ざりショウガゴハンという新しい具材(新遺伝子)が誕生する可能性があるのと同じです。
ただこのような劇的なシャッフルはゲノムの安定性や細胞分裂に関わる多くの遺伝子を破壊してしまいました。
その結果、DNA複製中に間違いを見つけて修正する細胞の能力が弱まり、さらなるゲノムの再編成や遺伝子の改変が進んだと考えられます。
通常ならばこのような無秩序化の加速は、命のシステムを崩壊させ、種の断絶に繋がりかねません。
しかしミミズの先祖たちはこの危機を逆に利用して、進化の原動力としました。
研究者たちはこのような変化がミミズの先祖たちが陸上に進出する過程で起きたと推測しています。
海から淡水に、そして淡水から陸上へと進出したタイミングでシャッフルが起きていることがわかるからです。
また今回の調査によりゲノムの安定性にはスイッチのようなものがあり、ミミズたちはそのスイッチをオフにしてシャッフルを強め、現在も進化を加速している可能性が示されました。
研究者たちはこのようなゲノムの不安定化の背後にあるメカニズムを解明することができれば、生命の進化についてよりよく理解できるようになると述べています。