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ミミズはゲノムが「完全にごちゃまぜ」になっていると判明!/Credit:clip studio . 川勝康弘
biology

ミミズはゲノムが「完全にごちゃまぜ」になっていると判明!

2024.09.06 Friday

カオスがミミズを生みました。

台湾の中央研究院(AS)で行われた研究によって、数億年前に海から陸へ進出する過程で、ミミズたちの染色体上の遺伝子たちが、落としてしまったお弁当の中身のように、ほぼデタラメにシャッフルされていたことが発見されました。

研究者たちは「これまでに調査された動物のなかで、ミミズのゲノムは最も混乱している」と述べています。

進化の過程でミミズたちの身に何が起きていたのでしょうか?

研究内容の詳細は2024年8月14日に『Molecular Biology and Evolution』にて公開されました。

Annelid Comparative Genomics and the Evolution of Massive Lineage-Specific Genome Rearrangement in Bilaterians https://doi.org/10.1093/molbev/msae172

あらゆる種でみられる生命現象もミミズでは通用しない

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ミミズの祖先はかつて海から淡水に、そして淡水から陸上へ生活圏を移動させました。現在の系統樹にもその痕跡が残っています/Credit:Thomas D Lewin et al.,Molecular Biology and Evolution (2024)

ミミズは、落ち葉や枯草を分解することで豊かな土壌を作り上げる手助けをしてくれます。

ミミズに似た生物は海や淡水にも生息しており、このニョロニョロした生物たちは一つの大きなグループ(環形動物門)に属しています。

たとえば海に生息するゴカイや淡水域に生息するヒルなども、ミミズの仲間として知られています。

しかし新たな研究では、私たちにとって身近な陸上のミミズたちのゲノムが、祖先の海洋生物と比べて完全にごちゃまぜになっていることが発見されました。

これまで様々な生物のゲノムが分析されてきましたが、先祖のゲノムセットがここまでかく乱された生物は確認されていません。

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上の図は主に海の中に生息する環形動物のゲノムを示したものです。各染色体に含まれる遺伝子に色をつけて、近縁種と比較しています。この図の右側をみてみるとある染色体に乗っていた遺伝子たち(黄色)は別の種でもおおむね同じ染色体に引き継がれていることがわかります /Credit:Thomas D Lewin et al.,Molecular Biology and Evolution (2024)

これまでの研究では、同じ遺伝子について調べると、近い種の間ほどDNA配列が似ており、遠い種ほど違いが大きくなることがわかっています。

「人間とチンパンジーのゲノム情報の98.8%が同じ」という話を聞いたことがあるのも、人間とチンパンジーが極めて近い種であるからです。

両者のゲノムをお弁当の具材に例えるならば、人間のゲノムもチンパンジーのゲノムも両方とも同じコンビニで売られている「和風懐石弁当」であり、同じような具材を使って構成していることを示します。

たとえば人間のお弁当に含まれるシャケや卵焼きとチンパンジーのお弁当に含まれるシャケと卵焼きの一致率が98.8%であることを意味します。

またこの類似点は染色体にも反映されており、近い種では染色体に含まれる遺伝子セットも近くなることが知られています。

こちらもお弁当に例えるならば、人間のお弁当(ゲノム)の仕切りとチンパンジーの仕切りがほぼ一緒であることを意味します。

(※人間の染色体は46本(お弁当が46カ所の具分けがされている)でチンパンジーの染色体は48本(お弁当が48カ所の具分けがされている)です。これは人間ではチンパンジーの12番と13番の染色体が融合しているからです。お弁当に例えるならば漬物ゾーンとショウガゾーンがチンパンジーでは区切られているのに人間では一緒になってしまっていると言えるでしょう。ただそれ以外の区分けは両方の種でほぼ保たれています)

このような区分けは左右対称の外見をした生物(脊椎動物からタコやイカ、ミミズも含む)では、おおむね一致していることが知られており、またその範囲をサンゴや海綿動物などに拡大しても、ある程度の一致を保っています。

この現象は「マクロシンテニー」と呼ばれており、広範な生物が同じ染色体に同じ遺伝子を持つ傾向があることを示しています。

(※シンテニーという概念は染色体内の遺伝子の保存された順序を指します)

近くにある遺伝子は連動して動きやすくなり、マクロシンテニーを維持することは先祖の使っていた遺伝子の連動システムを子孫が引き継いでいることを示しています。

より生物学的な説明をすれば以下のようになります。

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たとえば近縁の2種の1番染色体を比較した場合、一方の種の1番染色体に「A・B・C・D・E」という5種類の遺伝子が含まれていた場合、もう一方の種の1番染色体にも同じ5種類の遺伝子が含まれている可能性が高くなります。 人間とチンパンジーの染色体も非常に良く似ており、人間の1番染色体にあるほとんどの遺伝子は、チンパンジーの1番染色体にもあります。このような傾向は人間とチンパン時ーだけでなく広範な生物種においてみられることからマクロシンテニーと呼ばれています。/Credit:clip studio . 川勝康弘

しかし新たな研究により、この法則はミミズには当てはまらないことが明らかになりました。

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