繰り返される情報を正しく感じる「真実性の錯覚」とは?
「真実性の錯覚(illusory truth effect)」は以前から知られている認知バイアスの一種です。
これは同じ情報を何度も聞いているうちに、それが正しいか間違っているかは別として、信憑性のあるものに感じてしまうという心理効果のこと。
これとよく似た認知バイアスとして「単純接触効果」があります。
単純接触効果は、ある対象と何度も接点を持つうちに好意を抱くようになるというものです。
同じ人や物に繰り返し会ったり、見たりしていると、警戒心が薄れていき、親しみや親近感といったポジティブ感情を感じやすくなるのです。
例えば、とある政治家がさして大きな成果を上げていないにも関わらず、テレビに何度も出ているのを目にしていると、「この人頑張っているな」とか「信頼できそうだな」と好意的な印象を持ってしまうシチュエーションを指します。
「真実性の錯覚」はこれの言説や情報バージョンと言えるでしょう。
その一方で「真実性の錯覚」に関する研究はこれまで、一般的な知識や雑学に焦点を当てたものがほとんどでした。
そのため、実際的な議論やテーマにおける主義・主張に対して「真実性の錯覚」が起きるかどうかは確かめられていませんでした。
そこで研究チームは今回、世界的に大きな関心事となっている「気候変動」をテーマに、この心理効果が起きるかどうかを検証してみました。
現在、主に人為的な原因によって、地球規模で温暖化が起こっていることは97%以上の気候科学者が同意している事実です。
つまり客観的に見れば、「気候変動が地球規模で起こっている」という主張は正しいことになります。
その一方で、世の中には気候変動懐疑論者が存在しており、彼らは「地球温暖化は嘘である」「温暖化の原因は人為的なものとは関係ない」「気候変動は心配すべきものではない」といった科学的に根拠のない情報を発信しています。
どちらを信じるかは人々の自由ですが、チームは今回の調査で、気候変動を信じている人と信じていない人の両方を対象に、自分の信念とは反対の意見に何度もさらされた場合に「真実性の錯覚」が起きるかどうかを調べてみました。