日本語ロゴは「周辺視野」で捉えやすい!
ニューロマーケティングにおいて視覚認知性を調べる際は「中心視野」による対象物の注視や視線の動きを測定します。
中心視野とは、目を動かさないで一点を見つめる固視点を中心にして左右に約30度以内の視野のことです。
つまり中心視野は主に、自らが意識的に対象物に焦点を当てたり、目で追っかけたりする視線を指します。
一方で、ブランドロゴの視覚認知には「周辺視野」が重要な役割を果たすと考えられています。
周辺視野とは、中心視野の外、具体的には左右35度より外側の視界に入る範囲です。
いわば「視界の端」であり、車の運転中など、中心視野の外側から来る車や歩行者に気づくのに重要な役割を果たします。
それはまた、道路脇の外食チェーン点のロゴ看板に気づくのにも重要でしょう。
しかし視覚認知性の研究ではこれまで、被験者の周辺視野による視覚認知を測定するツールがありませんでした。
そこでチームは中心視野ではなく、周辺視野での視覚認知を測定できる新手法「潜在的視線解析法(Covert EyeTracking:CovET)」を新たに開発(下図を参照)。
これを用いて、サイゼリヤの2つのロゴがどのように視覚認知されているかを検証しました。
実験には24名の学生が参加。
画面上に4つのブランドロゴが中心視野の左右上下に提示され、指定されたターゲットロゴがあれば手元のキーを押さず、ターゲットロゴがなければ素早くキーを押すというタスクに取り組んでもらいました(下図を参照)。
このとき、被験者の目の動きは高性能の視線計測器(Tobii Pro Spectrum)によってモニタリングされています。
そして実験のデータ分析をした結果、サイゼリヤの英語ロゴは中心視野を動かさないと視覚認知がしにくく、周辺視野では捉えずらいことが示されました。
下図の右がそれで、中心の水色は中心視野を示しており、同じ大きさの青丸は中心視野を英語ロゴに移動させたことを示しています。
ところが興味深いことに、日本語ロゴは中心視野を動かさなくとも、周辺視野で十分に視覚認知できていることが判明したのです。
下図の左がそのことを示しており、被験者は視点を完全に日本語ロゴに移さなくとも、周辺視野でサイゼリヤのロゴと認知できていることがわかりました。
以上を踏まえると、サイゼリヤのロゴが2つあることには大きな強みがあると研究者は指摘します。
例えば、サイゼリヤがメインの英語ロゴしか使わなかった場合。
店舗や道路脇の広告看板に英語ロゴを立てると、中心視野でじっくり見れば「おっ、サイゼリヤがある」と認識できますが、目の端にチラッと入ったくらいではそれと認識できず、お店をスルーしてしまう可能性があります。
一方で、日本語ロゴを広告看板として使うと、中心視野でしっかり見なくても、目の端にチラッと入っただけで「サイゼリヤあるじゃん!」と気づくことができるわけです。
つまり、サイゼリヤの日本語ロゴの視覚認知性の高さは、お客さんを惹きつける広告看板として打ってつけだと考えられます。
これは研究者たちの独自の答えであって、実際にサイゼリヤの経営者たちが意識してそうしたのかどうかはわかりません。
しかしサイゼリヤが日本国内における外食チェーン店のトップに君臨しているのは、こうした日本語と英語の2枚看板の力も大きいのかもしれません。
そんなこと経営者に聞けよ、と思う人もいるかもしれませんが、経営者がどう考えているにせよ実際にそれが有効であるかどうかはわかりません。
今回の研究は、2つのロゴを使い分けた場合の効果を定量的に測定する方法を見つけ出したという意味で、非常に意義深いと言えるのです。