史上初の「深海を泳ぐウミウシ」と判明!生物発光もできる
一般的なウミウシはサンゴ礁を含む浅い海に生息し、藻類や海綿動物、イソギンチャクなどを食べて生きています。
ウミウシは世界に5000種近く存在するとされていますが、その行動範囲は基本的に浅い海に限定されており、深海に生息するタイプはこれまでほぼ知られていませんでした。
深海の「海底」を這って生活するウミウシがわずかに確認されているのみだといいます。
MBARIの海洋生物学者であるブルース・ロビソン(Bruce Robison)氏は「ほぼすべてのウミウシは浅瀬の海底に生息しているため、これほど深い場所で自由に泳ぐウミウシの新種が見つかったのは非常に驚きでした」と述べています。
ロビソン氏らは新種新属のウミウシを新たに「バティデヴィウス・コウダクティルス(Bathydevius caudactylus)」と命名しました。
充実した研究のおかげで、新種の生態はかなり細かなところまで明らかにされています。
まず、この生物は大きなフードと付属肢を連動させるように動かしてフワフワと移動していました(自由遊泳の姿を捉えた映像は記事の最後に添付してあります)。
またウミウシは通常、「舌」のような器官を使って獲物を食べますが、本種にはそれがありません。
その代わりに、大きなフードを使ってアミエビのような小さな甲殻類を捕獲し、中にある口部から獲物を食べています。
さらに本種は深海生物によく見られる「生物発光」の能力も持っていました。
チームが無人探査機を近づけたところ、本種は脅威を感じたためか、全身をうっすらと青緑色に光らせたのです。
加えて、この生物は光らせたままの付属肢を1本切り離して、海底に落とす行動も取っていました。
研究者いわく、これはトカゲの尻尾切りのように捕食者の気をそらせる行動と似ているといいます。
それから生殖システムを調べてみると、本種は一個体のうちにオスメス両方の生殖器官が備わっている「雌雄同体(しゆうどうたい)」であることがわかりました。
また実際の繁殖方法も野生下で観察されており、一例を挙げると、1匹の個体が水深2755メートルの海底に体を固定し、リボン状の卵を産んでいたのです。
海底に付着した卵は産卵から3日後に幼生となっていました。
今回の研究結果は、これまで浅い海にしか生息できないと思われていたウミウシのグループが予想以上に柔軟に環境適応できることを示すものです。
このように深海には私たちの知らない生物がまだまだたくさん隠れています。
今後さらなる深海調査を進めることで、未知なる”生命の秘密”が明らかにできるかもしれません。