炎を上げる「地獄の門」は実在する
炎を上げる「地獄の門」は実在する / credit:Wikimedia Commons
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【地獄の門】実在する「地獄の門」はもう誰も閉じることができない! (2/2)

2025.01.04 14:00:01 Saturday

前ページ地獄の門の正体とは

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メタンとはどのような物質なのか

実はメタンは今、地球温暖化にとって二酸化炭素よりも温室効果のあるガスとして有名になってしまっています。

家畜として飼育される牛のげっぷにも含まれる、いや、水田からも放出されているなどと取り沙汰されるようになりましたが、「地獄の門」から吹き上がるメタンは、大昔の生物が形を変えた天然ガスの一種です。

ではなぜ二酸化炭素削減が叫ばれるこの時代に、天然ガスが注目されているのでしょうか。

経済産業省資源エネルギー庁に、電気事業者発電電力量を示すページ(電気事業者の発電電力量)があります。(電力調査統計

統計にある2024年6月分電気事業者の発電電力量を見てみましょう。

火力 415.8億 kWh

水力(揚水式含む) 70.9億 kWh

原子力 72.6億 kWh

その他

二酸化炭素排出量削減が急務の中、日本では火力発電による発電量が一番多くなっています。この時代への逆行は何でしょうか。

それは発電における化石燃料の持つパワーが関係しています。

発電に限っていえば、火力発電の持つパワーと効率の良さは無視することができません。

カーボンニュートラル(脱炭素)実現のため注目されているのが太陽光発電ですが、太陽光発電は、発電した電気を蓄電する必要があります。天候により発電量が安定しないため、いったん蓄電する必要があるのです。

そのため、発電と蓄電両方の設備が必要です。さらに、蓄電池は寿命が10年から15年程度のため、寿命が来る前に取り換える必要があります。つまり、設置スペースとコストがかかる発電方法なのです。ここを乗り越えるための研究が進んでいます。

水力発電については、大型のダム建設ができる場所は限られており、既に日本中に多くのダムが造られていることから、今以上に多くのダムを作るのは難しい現状があります。また、降水量などの関係で常時安定した発電ができないこともあります。これは小水力発電の増加が検討されています。

風力発電は設備がまだ多くなく、原子力発電は廃棄物の問題がまだ残っています。そこで火力発電に頼らざるを得ないのが現在の日本の状況というわけです。

火力発電は燃料を燃やし、その熱で発生させた水蒸気でタービンを回して発電します。天候に左右されず、その時に必要な分だけ発電することができるのです。

ここで問題になってくるのが地球温暖化を食い止めるためのカーボンニュートラルです。また、天然資源であるため、使っていればいつかは使い尽くしてなくなってしまう運命でもあります。

そんな中、優秀なのが天然ガスというわけです。

天然ガスはどのぐらい環境に優しいかというと、燃やした時に出る二酸化炭素の量石炭を100とすると天然ガスは60。石炭を使っていた発電を天然ガスに変えると40%の二酸化炭素排出量削減になるということになります。

窒素酸化物の場合、石炭を100とすると天然ガスは40。何と60%の削減になります。硫黄酸化物に関しては石炭を100とした場合、天然ガスは何と0

天然ガスは二酸化炭素や窒素酸化物の排出量が少な目で、化石燃料の中ではよりクリーンなエネルギーといえるでしょう。

石炭を燃やした場合と天然ガスを燃やした場合の二酸化炭素量などの比較
石炭を燃やした場合と天然ガスを燃やした場合の二酸化炭素量などの比較 / credit: ナゾロジー編集部

さらに天然ガスは軽いうえ、マイナス162℃で液体になり、体積は600分の1になり、LNG(液化天然ガス/Liquefied Natural Gas)と呼ばれます。これは輸送や貯蔵の上での大きなメリットがあります。

大陸ではパイプラインで輸出入をされることも多い天然ガスですが、島国である日本では天然ガスはLNGとして海上輸送をしています。

原油のほとんどを中東からの輸入に依存している日本ですが、天然ガスはオーストラリアや東南アジアでも産出されるため、原油よりは輸入する地域に依存するリスクを避けることができます

それでも二酸化炭素を排出するため、できるだけ二酸化炭素排出量を抑える研究も進められ、発電所に生かされています。

天然ガスはマイナス162℃で液体になり、体積は600分の1になるため海上輸送が可能
天然ガスはマイナス162℃で液体になり、体積は600分の1になるため海上輸送が可能 / credit: Wikimedia Commons

化石燃料である天然ガスは使い続けている限り、いつかは枯渇してしまいます。では、長期間使い続けているはずの天然ガスは、なぜ未だ有望なエネルギーとして使われ続けているのでしょうか。

実は、天然ガスは新たな鉱脈の発見で数字の上では埋蔵量は減るどころか増えている現状があります。

天然ガスは「地獄の門」のようにメタンが気体として沸き上がってくるだけではなく、シェールという鉱物の層に閉じ込められたシェールガス、砂岩などに貯まっているタイトサンドガス、石炭層に含まれるコールベッドメタン、メタンの周囲を水の分子が囲み、別名「燃える氷」と呼ばれることもあるメタンハイドレートなど、いくつかの形があります。

この鉱脈が新たに発見されることで天然ガスの埋蔵量はこれまでの消費量を超えて増えているということなのです。

トルクメニスタンの「地獄の門」のガス推定埋蔵量は未だ不明です。そのため、「地獄の門」がいつ閉じるのかは誰にもわかりません。

この炎を消し、天然ガスを無駄遣いしないため「地獄の門」の近くから天然ガスを採取できないか試験を行ったという情報もあり、現に、燃え上がる炎が最近では小さくなったという話も聞かれます。

採掘できれば国民のための資源、また外貨獲得のため役にたった大量の天然ガス。採取できれば比較的クリーンなエネルギーとなったはずでした。

しかし、難しかったようです。採取する前に炎を上げ、いつ閉じるともわからない「地獄の門」と化してしまったクレーターは、このまま燃やしておくほうがいいという結論が出されています。

なぜなら、仮に「地獄の門」を閉じても、そのガスは別の場所から地上に出てくると言われているからです。

メタンは燃やした時に出るCo2よりも、メタンそのままのほうが温室効果の高いことがわかっています。

つまり、地球温暖化防止対策としては、メタンが漏れ出てくるぐらいなら二酸化炭素が出ても燃やしたほうがマシということなのでした。

燃やさなければ地球温暖化を進めるメタンは他のどこかから漏れ出てくる……「地獄の門」は意外と環境問題の役に立っているとも言えるのでした。

「地獄の門」のラスボスはメタン。これをゲート内で討伐することは不可能で、ゲートの外へ引きずり出すことも成功しませんでした。対策はただ燃やしておくだけという残念な対応で、これは一体いつまで続くのか。

答えは誰にもわからないまま、「地獄の門」は現在も炎を上げ続けています。

地獄の門の炎は以前より小さくなったといわれる
地獄の門の炎は以前より小さくなったといわれる / credit: Wikimedia Commons

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【地獄の門】実在する「地獄の門」はもう誰も閉じることができない! (2/2)のコメント

ゲスト

この上空にタービンと発電機を設置すれば発電し放題じゃね

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