キリスト同士の殴り合いが勃発!
ロキーチはレオン(38)、ジョセフ(58)、クライド(70)の3人を引き合わせて、各々がイエス・キリストであると紹介しました。
すると案の定、自分こそキリストだと信じ込んでいる3人は互いに相手を嘘つき呼ばわりし、その場が混乱し始めます。
最初に口火を切ったのは元作家のジョセフであり、「私がキリストであり、この人たちは嘘をついている!」と主張しました。
それに対し、レオンは「違うだろ、あんたは偽物だ!」と罵ったり、クライド老人は「ワシが神であり、イエス・キリストであり、聖なる御霊である」と繰り返し続けたのです。
またレオンはこのセッションが精神的な拷問であり、ロキーチが自分たちを洗脳しようとしていると声を荒げました。
最初の顔合わせは混乱のまま幕を閉じましたが、これで終わりではありません。
彼らはその後2年間、隣り合わせのベッドで寝食を共にし、病院内の洗濯室で同じ仕事を任されたため、四六時中、一緒にいなければならなかったのです。
そして3人は誰一人としてお互いの立場を譲り合うことはありませんでした。
顔を合わせれば「私がキリストだ」「だから僕がキリストなんだって」「たわけが、ワシが真のキリストなのじゃ」と口喧嘩をし、次第に不満を募らせていきました。
ついに3人は誰が本当のキリストであるかを巡り、殴り合いにまで発展することもあったといいます。(本当のイエスなら暴力は振るわないと思いますが…)
いつまで経っても事態が進展しないため、ロキーチは3人の間に介入の手を入れ始めました。
3人のキリスト実験は当時から地元紙に取り上げられていたため、ロキーチはこの記事を3人に読ませ、それが自分たちのことだと認識させて、妄想から引き出そうと試みたのです。
ところが3人は共に、記事内で取り上げられている妄想患者が自分たちのことだと気づかず、「変な奴がいるもんだ」と我関せずだったといいます。
さらにロキーチは女性の研究助手に対し「レオンにアプローチをかけるよう」指示し、恋愛関係に発展させることで妄想から解放しようとしました。
目論見通り、レオンは研究助手の女性に恋をしたのですが、のちにそれが嘘だったことに気づき、自分の殻の中に引きこもってしまったのです。
その際、レオンは「真実こそ私の友であり、その他に友人はいない(Truth is my friend, I have no other friends)」と呟いたといいます。
しかし3人は毎日続く口論に疲れ果てたのか、お互いの関係性において変化を起こし始めます。