エボラ出血熱を治療する錠剤が登場する
エボラ出血熱は、エボラウイルスによって引き起こされる感染症で、初めて確認されたのは1976年のことでした。
主にアフリカの熱帯地域で発生し、人から人へと感染が広がることで、深刻な流行を引き起こしてきました。
エボラウイルスに感染すると、発熱、倦怠感、筋肉痛などの初期症状が現れ、その後、嘔吐や下痢、内出血などが進行します。
最終的には多臓器不全を起こすと報告されています。
致死率はアウトブレイクごとに異なり、過去の流行では40~90%でした。

これまでのエボラ出血熱の治療には、静脈注射による抗体治療や抗ウイルス薬が用いられてきました。
特に「Inmazeb(インマゼブ)」や「mAb114)」といったモノクローナル抗体療法は、ウイルスに対する免疫応答を強化することで一定の効果を示しています。
しかし、従来の治療法はいずれも点滴や注射による投与が必要であり、感染拡大時の迅速な対応が難しいという問題がありました。
またコストがかかる冷蔵保存が必要であり、世界の貧困地域の一部では投与が困難でした。
そのため、より簡便で効果的な治療法の開発が求められてきました。
こうした背景の中、研究チームは経口投与が可能な新たな抗ウイルス薬「オベルデシビル(obeldesivir)」の可能性を探るため、サルを対象とした実験を行いました。
オベルデシビルは、ウイルスの増殖に必要な「RNAポリメラーゼ」という酵素を阻害する働きをもち、ウイルスの増殖を効果的に抑制し、エボラウイルスの感染拡大を防ぐ可能性があります。
この薬は、新型コロナウイルスの抗ウイルス薬として開発された点滴薬レムデシビルがもとになっており、これを経口薬にしたものです。
では、経口薬オベルデシビルは、エボラウイルスに対してどれほどの効果を発揮するのでしょうか。