走行中のキュリオシティを撮影
「マーズ・リコネサンス・オービター(MRO)」は火星の周回軌道から火星を探査しています。
今回の写真が撮影されたのは、キュリオシティの火星探査開始から4,466火星日(ソル)目、地球時間で2025年2月28日のことでした。
火星の周回軌道にあるマーズ・リコネサンス・オービターは、搭載されている超高性能カメラ「HiRISE(高解像度画像科学実験)」を用いて、火星表面を詳細に撮影しました。
その撮影データを解析した結果、淡く赤茶けた大地に、小さな黒い点が移動しているのが見つかったのです。
これは走行中のキュリオシティでした。
キュリオシティの背後には、はっきりと続く一筋の灰色の線が見えますが、これは探査車の車輪が火星の土に刻んだ走行跡です。
キュリオシティの走行速度はとてもゆっくりで、最高時速0.16キロメートル、つまり人間の歩行速度の40分の1程度しかありません。

なぜこんなにもゆっくりなのかというと、理由は2つあります。
ひとつはエネルギー効率です。
火星でできるだけ長く探査してもらうため、電力消費を抑える必要があり、そのために無駄な加速は避けています。
もうひとつは安全な走行です。
火星の地形は一様ではなく、柔らかい砂地や鋭い岩場、急な傾斜などが続きます。
ヘタに飛ばして転んだりすれば、起こしてくれる人もいないので、永遠に寝転んだままになってしれないのです。
写真に映った走行跡は、火星の激しい風によっていずれ消えてしまう運命にあります。