キュリオシティはどこに向かっているのか?
キュリオシティが向かっているのは、ゲールクレーター内に存在する「ボックスワーク構造」と呼ばれる興味深い地形です。
ボックスワークとは、蜘蛛の巣のように網目状に広がった岩の構造で、地球では洞窟などで見られます。
形成のメカニズムは、まず地下水が岩の割れ目を流れ、その中に鉱物を沈着させること。
長い年月をかけて周囲の岩が風化・侵食されると、鉱物だけが残り、細かい格子状の模様を形作るのです。
このような地形が火星に存在するということは、かつてその地下に豊かな水流があったことを示唆します。
しかも、地中という比較的暖かく湿潤な環境は、微生物が生存するにはうってつけの場所だった可能性があります。
つまり、もし火星に古代の生命が存在したのなら、その痕跡がこうしたボックスワーク構造の中に閉じ込められているかもしれないのです。

NASAジェット推進研究所(JPL)のチームは、探査ルートを緻密に設計し、毎日の走行を慎重に指示しています。
目の前には急な傾斜が立ちはだかっていましたが、キュリオシティはすでにその坂を登りきり、新たな科学調査地点への到達はあと1カ月ほどの見込みです。
ここではキュリオシティが化学分析を行い、岩石に含まれる鉱物成分を詳しく調べる予定となっています。
それによって「地下水が流れていた痕跡」や「生命活動に伴う化学的なサイン」が検出できる可能性があるのです。
微かな望みを胸に、キュリオシティは今日もひとり、赤い世界を進み続けます。
ゴールが見えても、誰も迎えてはくれません。
しかしその孤独な旅路を私たちは地球から確かに見守っています。
大航海時代の船旅と同じで時間はかかりますけどその分待ってるのが楽しいというか。