量子電池とは何か?

私たちが普段使うリチウムイオン電池などの従来の電池は、金属の化学反応によって電気エネルギーを蓄える仕組みです。
これに対して量子電池は、電子や原子などの量子ビット(qubit)にエネルギーを保持させる新概念の電池です。
例えば光の粒(光子)や原子の運動など、量子力学的な過程から直接エネルギーを取り出し蓄える点が特徴です。
量子電池はまだ実験室レベルのアイデアですが、超高速で充電できる未来の電池として物理学者たちが本気で研究を進めています。
量子力学特有の現象を使えば、従来の物理法則では考えられない効率で電池を充電できる可能性があるからです。
2012年に量子電池の概念が提唱されて以来、研究者たちは様々な量子効果で充電性能を高めようと試みてきました。
例えば量子もつれ(エンタングルメント)を利用して電池内の全セルを「集団的」に同時充電することで、充電速度を劇的に向上できるという理論が報告されています。
ある研究では、約200個のセルを持つ電気自動車用バッテリーを量子充電すれば、従来より200倍速く充電でき、家庭用充電では10時間が約3分に、高速充電ステーションでは30分が数秒になる可能性が示されています。
このように夢のある予測が相次ぐ中、世界中の研究者が量子電池の実現に向けた課題に取り組んでいます。
こうした背景の中、今回紹介する研究は、量子力学のもう一つの奇妙な性質である「量子の重ね合わせ(スーパーポジション)」に着目しました。
重ね合わせとは、一つの粒子が同時に二つ以上の状態や場所に存在できる現象です。
研究チームは「量子電池を文字通り“2か所に同時に存在”させて充電したらどうなるか?」という斬新な発想で、充電の高速化につながるかを理論的に検証しました。
この量子電池の重ね合わせ充電法によって、これまで不可能だった完璧な充電効率が実現できるのではないか、というのが研究の目的でした。