新種の特徴とは?
新種魚竜「フェルナタトル・プレンティセイ」は体長およそ3.5〜4メートルの中型魚竜で、見た目はイルカのような姿をしていたと考えられます。
本種の最大の特徴は、頭骨の構造にあります。

眼の後ろにある「後眼窩骨」が棒状に高く伸びており、これは多くの魚竜で見られる三日月型の骨とは明確に異なっていました。
また「頬骨」が直線的で非常に短く、目の周囲をほとんど囲まないという点でも異質でした。
さらに上顎骨の前突起が細く長く、鼻孔のかなり前方まで突き出していること、烏口骨に深い切れ込みがあることなど、いくつもの形態的な特徴が組み合わさっていました。
これらは他のいくつかの魚竜と部分的に似てはいるものの、完全に一致するものはなく、新属新種としての妥当性が認められたのです。
標本は、ジュラ紀初期にあたる約1億9000万年前の地層から発見されました。
この時代の北アメリカにおける魚竜の化石記録は極めて乏しく、今回の発見はカナダで知られる2番目の魚竜分類群という貴重な例となります。
この発見は、単なる新種の報告にとどまりません。
100年以上も誰にも注目されずに眠っていた化石が、研究者の執念と再発見の偶然によって再び歴史の表舞台に立ちました。
失われかけた発見が、100年後に新たな科学的意味を持つ――それはまるで、海底で化石となった魚竜が、時を越えて私たちに「忘れないで」と語りかけているかのようです。