白亜紀のイカ化石はほぼ見つかっていない

イカ類は、タコやオウムガイと同じ「頭足類」と呼ばれるグループに属し、無脊椎動物としては異例ともいえる高度な知性とカモフラージュなどの身体能力をもっています。
現代の海では、魚やクジラに匹敵する捕食者として、あるいは反対に多くの海洋生物の餌資源として、海洋生態系の中核的な役割を果たしています。
しかしこの“海の忍者”とも言えるイカ類について、進化の歴史は驚くほどわかっていませんでした。
理由は単純で、イカには殻や骨がなく、化石として残りにくいからです。
特に重要な分類の手がかりとなる「クチバシ」はとても壊れやすく、長いあいだ古生物学の世界ではイカの痕跡は“ほぼゼロ”とされてきました。
これまでに発見されていた白亜紀のイカ化石は、たった1個とされています。
しかもそれは巨大な標本であり、運よく保存された極めてまれなケースでした。
つまり、白亜紀(約1億4500万~6600万年前)の海にイカがいたという証拠は、ほとんど存在しなかったのです。
そのため、従来は「イカの多様化はアンモナイトが絶滅した白亜紀末以降に起こった」という説が定説となっていました。
しかし、イカの仲間はその身体能力からして、もっと早くから生態系に存在していたはずです。
ではなぜ、見つからなかったのか?
その謎を解く鍵となったのが、今回登場したデジタル化石マイニング技術でした。