文化は変わるが「自分は変わらない」という違和感
時間が経つにつれて、企業の文化や価値観は大きく変化していきます。
新たなツールの導入、方針の転換、異なる世代のリーダーの登場などにより、企業は徐々に「昔とは違う組織」に姿を変えていきます。

その変化に対して、長期勤務者が抱きやすいのが、「自分は時代遅れだ」という心理です。
仕事は単なる労働ではなく、自分の能力や存在意義を確認する場でもあります。
しかし、周囲の文化が変わることで、自分の働き方や価値観が次第に「場違い」になっていくような感覚が芽生えてしまいます。
「かつての仲間たちと築いてきたやり方が、もはや通じない」
このような感覚は、自己イメージと職場の現実のズレを引き起こし、自分がまるで過去の遺物になったかのように感じさせます。
さらに、このような長期残留には、職場の「サバイバー症候群」と呼ばれる心理状態も伴います。
本来これは、大規模なリストラなどで”生き残った”社員が抱く、罪悪感や喪失感を指します。
しかし、レイカー教授はこれを「通常の離職状況においても同様の心理が生じうる」と述べています。
「自分はなぜここに残っているのだろう」と感じてしまうのです。
こうした静かな疑問と自責感が積み重なると、「ここにいる自分」の価値が見えにくくなり、心理的な疲弊に拍車をかけてしまうのです。