切断してもくっつく!? 「自己修復センサー」の仕組みとは?
開発されたセンサーは、2つの主要な素材から成り立っています。
ひとつは、自己修復機能を持つ特殊なポリマー。
これは「Diels-Alder(ディールス・アルダー)反応」と呼ばれる化学反応を利用したものです。
この化学結合には可逆性があり、ダメージを受けると結合が一度切れ、再接触すると再び結合して元の状態に戻ります。

研究チームは、実験でこのポリマーでできたセンサーを半分に切断しましたが、室温で約24時間かけて自己修復できることを示しました。
また、センサーを60℃のオーブンに入れて加熱すると、自己修復プロセスが4時間に短縮されることも発見しました。
接着剤や外部の力を使わず、まるで生き物のように元通りになるのです。
別の実験では、センサーがちぎれるまで引き延ばされ、その後修復するというプロセスを6回繰り返しました。
それでも、導電性や機械的強度も初期の80%以上を維持することができたというのだから驚きです。
そしてセンサーに利用されているもうひとつの素材は「Galinstan(ガリンスタン)」という液体金属です。
この金属は常温で液体のまま安定しており、高い電気伝導性を持ちながらも毒性がなく、人体にも安全です。
センサー内部では、ガリンスタンが電気の通り道(回路)として機能しています。

では、真っ二つに切ってしまった場合はどうなるのでしょうか?
驚くべきことに、切断時に漏れ出すはずの液体金属は、ほとんど失われませんでした。
研究者の解説によると、空気に触れたガリンスタンの表面にはすぐに酸化膜が形成され、それが仮のフタのように働いて液漏れを防ぐというのです。
しかも再び破断面を合わせると、この酸化膜が壊れて再接続され、電流がまた流れるようになるというのです。
まるで人間の体がケガをしても血液が固まって止血されるように、このセンサーも“自己止血”してしまうというわけです。
では、このように開発された新しいセンサーの耐久性はどうでしょうか。