「どこが悪いのか自分でも分からない」“極端な運動の苦手さ”の正体
子どものころ、体育の時間に「どうして自分だけできないんだろう?」と悩んだ経験はありませんか。
同じように練習しても、他の子はどんどんできるようになっていくのに、自分だけ「失敗した原因が分からない」「どう直したら良いのかも分からない」と感じること、運動が苦手な子の特徴として珍しくありません。
実は、この“自分の失敗の原因に気付きにくい”という現象こそ、発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder, DCD)の大きな特徴です。
DCDは、近年注目されている神経発達症(neurodevelopmental disorder)のひとつです。
DCDの子どもや大人は、「ボールをまっすぐ投げられない」「箸やペンをうまく使えない」「ダンスや縄跳びのリズムを体で再現できない」など、年齢相応の運動技能を身につけるのが極端に難しい傾向があります。
こうした特徴は、いわゆる“運動音痴”と呼ばれる人が持つ「なぜできないのか自分でもよく分からない」「何度やっても同じ失敗を繰り返してしまう」という運動に対する独特の悩みにつながります。
一般的な運動の苦手さは、運動経験の不足や体格・筋力、また過去の失敗体験による“苦手意識”などが関係している場合が多く、努力や経験の積み重ねで改善することが期待できます。
しかしDCDの特徴は、自分の動作の誤りを見つけて修正する力が弱い点にあるとされています。
たとえばキャッチボールで失敗したとき、多くの人は「肘が下がった」「タイミングが早かった」など原因を特定し、次に活かそうとします。
しかしDCD傾向の強い人は、失敗の要因や修正点に気づきにくく、同じ練習を反復してもなかなか上達しません。
ではなぜDCDの人は失敗の原因や問題点に気付きにくいのでしょうか?
この根本には、脳の“ある特別な特徴”が関わっていることが最近の研究では明らかになってきています。それこそが、運動が極端に苦手な人の謎を解くカギとなるのです。