猫の認知症が疑われる8つのサイン

猫の認知症は、まず行動のちょっとした変化として現れます。
次の「8つのサイン」は、獣医師に相談すべき重要な目安です。
1. 異常な鳴き声
これまでと違って頻繁に鳴いたり、夜中に大きな声で鳴き続けるようになります。飼い主を呼ぶような切迫した声が増えることもあります。
2. ふれあい方の変化
以前よりも甘えん坊になって飼い主に付きまとう、逆に距離をとって不機嫌そうに振る舞うなど、交流の仕方が大きく変わることがあります。家族を認識できないような様子を見せることもあります。
3. 睡眠パターンの変化
夜に落ち着きがなくなり、昼間に長時間眠るようになるなど、昼夜逆転の傾向が出ます。
4. トイレの失敗
トイレの場所を忘れたり、トイレ以外の場所で排泄してしまうことがあります。他の病気のサインでもありますが、認知症でも典型的に見られる症状です。
5. 方向感覚の喪失
壁をじっと見つめる、家具の裏で動けなくなる、ドアの間違った側に立つなど、混乱した行動が増えます。これは人間の認知症患者の徘徊や迷子に似ています。
6. 活動量の変化
これまでより活発になったり、逆に動かなくなったりします。遊びや探検に興味を失い、毛づくろいを怠ることもあります。
7. 不安そうな様子
以前は平気だった人や環境、音に対して不安を示すことがあります。ベッドの下や棚の上に隠れるなど、逃避行動が目立つようになります。
8. 学習能力の低下
これまで覚えていたルール(トイレや食器の場所など)を忘れたり、新しいことを学ぶのが難しくなります。
これらのサインは1つだけでなく、複数が同時に現れることも多いため、見過ごさずに観察することが大切です。
ケアの工夫と今後の研究
ネコの認知症は、人間や犬の研究から得られた知見をもとに理解が進められていますが、まだ研究は十分ではありません。
現時点では根本的な治療法はなく、進行を遅らせたり生活の質を改善するケアが中心となります。
環境の工夫
軽度の症状であれば、脳を刺激する遊びやおもちゃを使った「狩りごっこ」、かくれんぼなどで探索を促すことが有効とされています。
こうした活動は神経を活性化させ、進行を遅らせる効果が期待できます。
ただし、重度の認知症の猫に環境を大きく変えると、かえって混乱や不安を招き、症状が悪化する場合があります。
状態に応じた慎重な配慮が欠かせません。
食事の工夫
ビタミンEやCなどの抗酸化物質、必須脂肪酸を含むサプリメントが脳の炎症を抑え、進行を遅らせる可能性が示されています。
ただし科学的に効果が確認されているのは犬での研究であり、ネコでの有効性はまだ不明です。
特に犬用サプリメントにはネコに有害な成分(αリポ酸など)が含まれることがあるため、必ずネコ用に認可されたものを使う必要があります。
ネコの認知症は珍しい病気ではなく、加齢とともに多くの猫が経験する可能性があります。
行動の小さな変化を「年のせい」と見過ごさず、早めに気づいて獣医に相談することが、愛猫の快適な老後を守る第一歩となるでしょう。