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50億以上のヒトデを殺した犯人を特定 / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
biology

「腕がとれ体が溶ける病気」で数十億のヒトデが死亡。犯人がついに判明 (2/2)

2025.09.11 11:30:32 Thursday

前ページ10年に及ぶ「ヒトデの大量死」の謎と、ついにたどり着いた「容疑者」

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50億以上のヒトデを死に追いやった犯人を特定!なぜ発見が遅れたのか?

「ヒトデの体内液にVibrio pectenicidaが多い」というだけでは、犯人と断定できません。

そこで研究チームは、感染症の原因を証明するために分析しました。

まず、病気のヒマワリヒトデの体液からVibrio pectenicida FHCF-3株を純粋培養で取り出し、これを健康なヒトデに注射・曝露させました。

その結果、数日以内に健康だったヒトデが次々と「体表に傷ができ、腕が取れ、体が溶けていく」という壊死病の典型的な症状を発症。

こうして、Vibrio pectenicida FHCF-3株こそがヒトデ消耗病の直接的な原因であることが科学的に確定しました。

では、なぜ今までこの犯人が見つからなかったのでしょうか?

その理由は大きく二つあります。

第一に、Vibrioは死んだヒトデの中ではすぐに消えてしまうため、従来の「死骸調査」ではほとんど検出できませんでした。

ヒトデが死ぬと、体内や表面の環境が急激に変化(免疫が止まり他の微生物が一気に増加)するため、死後すぐに調べないと他の細菌たちに上書きされるのです。

第二に、Vibrio菌は普段は海に普通にいる細菌であり、「常在菌」としてあまり疑われていませんでした。

サンゴや貝、魚などでも一般的に見られており、普段は有機物分解や栄養循環を担う「海の生態系に必要な存在」です。

しかし、気温や温の上昇、海の富栄養化、ヒトデ自体のストレスといった「環境の変化」が引き金となり、この細菌が急激に増殖することで、「大量死をもたらす病原体」に豹変していたのです。

この研究により、10年以上続くヒトデ消耗病の正体をようやく突き止めることができました。

今後は、原因菌の拡散状況や感染経路の把握、ヒトデ壊死病に強い個体の育成や再導入、沿岸生態系の復元や海洋環境の管理 など、科学的根拠に基づいた対策や回復プロジェクトを本格的に始動させる必要があります。

ヒトデの大量死は海の表面下で進行する「静かな危機」でしたが、今回の発見によって、私たちが再び海の森や豊かな生態系を取り戻すための新しい希望が生まれています。

現在、シアトル水族館などではニチリンヒトデの繁殖や再導入計画も始まっており、回復への第一歩が踏み出されています。

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