「空を飛ぶ倉庫」が風力発電を進化させる
「輸送の壁」を打ち破るため、ラディア社が開発を進めているのが、世界最大の貨物専用飛行機ウインドランナーです。
ウインドランナーの最大の特徴は、その「規格外の大きさ」にあります。
なんと、全長108mです。
世界最大の飛行機といえば、An-225(全長84m)であり、他にもエアバスA380(全長73m)やボーイング747(全長71m)がその巨大さで有名です。
これらを考えると、製造中のウインドランナーが常識外れの大きさであることがよく理解できます。
またこの飛行機の翼幅は80m、全高は24m(8階建てビルに相当)。
貨物室の容量はボーイング747の9~12倍にもなり、最大で105メートルのブレードを1本、または95メートルのブレードを2本積載できます。
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— Radia, Inc. (@radiaenergy) May 30, 2024
この巨大な飛行機は、舗装されていない未整備の土の滑走路にも離着陸できるよう、20本のタイヤや軽量化設計、特殊な翼の形状など、さまざまな工夫が盛り込まれています。
また、前方のコックピット部分を持ち上げることで、真っすぐに巨大ブレードを積み込める仕組みになっています。
さらに、機体内部の加圧は必要最小限にとどめ、エネルギー効率と軽量化を徹底追求しています。
搭載されるエンジンも、現代の大型旅客機で実用化されている高出力モデルを流用することで、安全性と信頼性を担保しています。
ちなみに、既存の最大級の貨物機(アントノフAN-124やC-5ギャラクシー)ですら、巨大なブレードを運ぶには長さや積載スペースが足りず、舗装された空港でしか運用できません。
これらの情報を総合すると、ウインドランナーのような超大型・超ロング貨物専用機だけが、陸上風車ブレードの「空輸」という現実解をもたらす、ということです。
この「空を飛ぶ倉庫」の登場により、これまで地理的・インフラ的制約で諦められてきた地域でも、最新鋭の巨大風力発電機を設置できるようになるはずです。
現段階では、政治的な許認可や支援政策の不透明さという課題も残っていますが、ラディア社は「これらの問題は自然に解決すると信じている」と述べており、2030年の実用化を目指しています。
ウインドランナーは単なる巨大飛行機ではありません。
再生可能エネルギーの拡大を、「輸送インフラ」という視点から根本的に進化させる試みなのです。