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「人への攻撃性は低い」とされてきたサメが観光客を襲う事件が発生 / Credit:Canva
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“人への攻撃性が低い”サメは、なぜ観光客を襲ったのか?科学者が説明

2025.10.28 06:30:52 Tuesday

2025年4月、イスラエルの地中海沿岸都市ハデラの沖合で悲惨な事件が起きました。

観光に訪れていた40歳の男性が、これまで人を襲うことはほとんどないとされてきたサメの群れにより命を落としたのです。

フランスのPSL研究大学(PSL Research University)は、この事故の経緯を目撃証言と公開映像の分析から丁寧に再構成し、なぜ“無害”とみなされてきたサメが人間を襲うに至ったのかを説明しました。

この研究は2025年8月16日付の『Ethology』誌に掲載されています。

Scientists Explain Why ‘Harmless’ Sharks Devoured Swimmer in Chilling World First https://www.sciencealert.com/scientists-explain-why-harmless-sharks-devoured-swimmer-in-shocking-world-first
When Competition Breaks the Rules: Feeding Frenzy as a Trigger for Unexpected Fatal Shark Predation Bites on a Human Sea-User by Non Traumatogenic Carcharinids in the Oriental Mediterranean https://doi.org/10.1111/eth.70013

攻撃性が低いはずのサメ「ドタブカ」が観光客を襲う

まず、今回の悲惨な出来事のきっかけとなったサメドタブカ(学名:Carcharhinus obscurus」について紹介します。

ドタブカはメジロザメ属の中型から大型のサメであり、成体では3mを超える大きさに達する個体も報告されています。

温暖な海域の沿岸から大陸棚にかけて広く分布し、長く人への致命的捕食リスクが低い種と考えられてきました。

そのため、イスラエルの地中海沿岸都市ハデラの海でも、ドタブカなどのサメ観察を目的に多くの人が集まるようになっていました。

しかし事件が起きてしまいました。

観光に訪れていた40代の男性はドタブカの群れを撮影しようと、100m以上沖に泳いでGoProを手にシュノーケリングをしていました。

そして突然、ドタブカが男性の手や体に噛みつきます。

鋭い歯で生じた傷から血が広がり、水中には咬みつきの衝撃音も加わりました。

この血の匂いと音の刺激が周囲のサメたちの興奮を一気に高め、状況は急速に悪化しました。

複数のサメが短時間に同じ獲物へ競うように殺到したのです。

現場では水面が赤く染まり、背びれや尾びれが相次いで現れました。

目撃者は男性が助けを求める声を上げた直後に、海の様子が一変したと証言しています。

翌日の捜索ではごくわずかな遺体の一部が回収され、複数のサメによって捕食されたことが確認されました。

では、普段なら人を獲物と見なさないはずのサメが、この時は、どうして人間を襲ったのでしょうか。

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