無意識の「まばたき」が音楽に同期していたと判明
無意識の「まばたき」が音楽に同期していたと判明 / Credit:Canva
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無意識の「まばたき」が音楽に同期していたと判明 (2/2)

2025.11.20 17:00:32 Thursday

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音楽を聴くと「まばたき」までリズムに乗っていた

音楽を聴くと「まばたき」までリズムに乗っていた
音楽を聴くと「まばたき」までリズムに乗っていた / Credit:Canva

無意識のまばたきは音楽のリズムに同期しているのか?

研究チームはこの謎に挑むため、123人の中高生~若者(いずれも非音楽家)を対象に実験を行いました。

被験者にはテンポの揃った西洋クラシック音楽の曲を何度か繰り返し聴いてもらい、その間の瞬きを専用カメラで記録しつつ、脳の活動も脳波計(EEG)で測定しました。

さらに音楽そのものではなく、一定の拍だけを刻む単音のビート音を聞かせる条件も設け、瞬きの動きがメロディーではなくリズムそのものに引き出されるのか検証しました。

その結果、参加者たちのまばたきの周波数と、曲のビートと一致する周波数のところでくっきりとピークが現れたのです。

例えば、「だいたい0.7秒ごとにトン、トンと拍が来る(1分間に約85拍の)ゆっくりしたテンポ」の曲を聴いた場合、人の瞬きもそのテンポにいちばん強くそろっていました。

(※ここで言うリズムやビートは曲全体のものです。ベートーベンの「運命」の「ジャジャジャ、ジャ~ン」に合わせてまぶたが「パチパチパチ、パチーン」と動くわけではありません)

そして興味深いことに、脳波(脳の電気的な振動)も音楽のリズムに同調して変動していました。

しかも曲を逆再生してメロディーの手がかりを無くしても、あるいは機械的なビート音に差し替えても、人の瞬きは相変わらず曲のテンポに合わせてタイミングを取っていたのです。

このことから、瞼のリズム同期現象はメロディーの知識とは無関係に起こり、音楽のビートそのものに脳と体が反応した結果だとわかります。

では、瞼と脳はどのように息を合わせているのでしょうか。

研究者たちは瞬きのタイミングと脳波の関係を詳しく調べ、瞬きの直前直後で脳のリズム反応がどう変化するかを可視化してみることにしました。

するとなんと瞬きが起こる直前に脳のリズム関連の活動がグッと上昇していることが判明しました。

ちょうど脳が「せーの」と先行して合図を送り、それに合わせて瞼がパチッと瞬きをしているかのようです。

言い換えれば、脳内のリズム取り役が次の拍を予測してタイミング良く瞬きの準備をしている、と解釈できるのです。

さらに脳科学的な分析では、聴覚や運動、言語に関わるとされる “神経の配線密度が低い人ほど”瞬き同期や脳波の同期が強いという、逆転した結果になったことです。

研究チームは、これはむしろ「配線がすっきり整理されていて、リズム処理に効率よく使われている状態かもしれない」と解釈しています。

もっともどんなリズムでもまばたきの同期が同じように起こるわけではありませんでした。

研究ではゆったりした66拍/分や標準的な85拍/分の曲ではしっかり瞬きが同期しましたが、速い120拍/分になると瞬きの同期はやや弱まりました。

瞼がリズムについていける上限スピードが存在するのかもしれません。私たちのまばたきにはふだんの自然なペースがあり、あまり速いテンポではビートと同じペースでそろいにくくなるのかもしれません。

この発見により、私たちはまばたきという何気ない仕草から脳内のリズム処理を読み取る新たな方法を手にしました。

瞬きはカメラで記録するだけの非侵襲的(体に負担をかけない)な指標なので、将来的にはリズム感や注意力に課題を抱える人のスクリーニング(ふるい分け検査)に応用できる可能性があります。

実際、音楽に合わせたリズム運動はパーキンソン病など運動機能の障害のリハビリに役立つことが知られており、脳のリズム同期メカニズムの解明はそうした神経疾患の治療にもつながると期待されています。

もし今度誰かとライブに行くことがあったら、隣の人のまばたきのテンポが音楽のテンポに似ているかをこっそり観察してみるといいかもしれません。

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