何℃まで耐えられるのか?
実験では、30〜64℃まで17段階で培養温度を変え、耐熱限界を調べました。
その結果、
・42℃未満:成長ゼロ
・55〜57℃:最適成長温度
・63℃:細胞分裂(有糸分裂)を確認
・64℃:活発な運動が持続
という驚異の結果が得られました。
従来、真核生物の理論上限とされた60〜62℃を明確に突破しています。
さらなる高温では、
・66℃:保護用のシスト(休眠構造)を形成
・70℃:運動が停止するが、60℃に戻すと回復
・80℃:完全に死滅
という段階的な反応を示しました。
この「70℃からの復活」は特筆すべき点で、真核細胞の構造は熱に弱いとされる従来の理解を覆す結果です。
■ 高温でも壊れない細胞の秘密:耐熱タンパク質と遺伝子ネットワーク
ゲノム解析によって、このアメーバが高温を耐え抜く仕組みも一部明らかになりました。
とくに特徴的なのは以下の点です。
① 熱ショックタンパク質(HSP)の拡張
タンパク質の変性を防ぎ、折りたたみを補助します。
② タンパク質分解システムの強化
熱による損傷を素早く処理する能力が発達している。
③ タンパク質そのものが“熱に強い”
近縁種より、平均して約4℃も耐熱性が高かった。
また、60℃以上でも「安定」と推定されるタンパク質の数が5倍以上に増えていました。
以上のように、本種の発見は「真核生物は60℃を超えて成長できない」という従来の前提を覆すものです。
細胞分裂可能な上限温度を63℃に引き上げたことで、真核生物の限界線が大きく塗り替えられました。
さらに、この生物が示す強力な耐熱タンパク質や分子ネットワークは、生命の進化や極限環境への適応、さらには地球外生命探索における「生命の可能性」を考え直すヒントになると期待されています。


























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