なぜ脳はわざわざ記憶を書き換える仕組みを持っているのか?

今回の研究により、私たちの記憶は想起のたびに再構成されて更新される可能性のある動的なものであることが示唆されました。
ルノー教授は「この研究により、記憶が必ずしも正確でない理由や、それが時間・文脈・想像力によってどのように影響を受けるのかが理解する助けになります」と述べています。
言い換えれば、記憶とは過去と現在をつなぐ生きたプロセスであり、私たちが感じる「鮮明な思い出」ですら脳内で少しずつ編集されているということです。
コラム:なぜ脳はわざわざ記憶を書き換える仕組みを持っているのか?
「記憶が毎回書き換わるなんて、不利でしかないのでは?」
この疑問はとてもまっとうです。もし本当に、カメラのように過去をそのまま残しておけるなら、そのほうがテストにも有利ですし、裁判の証言も正確になりそうです。では、なぜ脳はあえて「不確かさ」を抱えた記憶システムを採用しているのでしょうか。
1つ目の理由は、「細部まで完全に覚える」ことにはコストがかかりすぎるから、という考えです。脳は無限の容量を持っているわけではありません。毎日の出来事を、音声も映像も匂いも全部そっくり保存し続けようとしたら、情報の整理や更新にとても大きなエネルギーが必要になります。そこで脳は、「その出来事が自分にとって何を意味したのか」「どんなパターンだったのか」といった骨組みを中心に残し、細かい部分は必要なときに推測で補う、というやり方を選んでいると考えられます。
2つ目の理由は、「細かいところより意味や概念を残す」ほうが後々に有利になる、という考えです。これは一見「不正確になっている」ようでいて、実は世界をきりよくまとめる圧縮処理でもあります。個々の場面の全ピクセルを保存し続けるより、「こういう状況ではだいたいこうなる」「あの人はこういうタイプだ」といった一般化された知識を増やしたほうが、将来の判断に役立つからです。
そのため海馬が「出来事の骨格」を保管しつつ、思い出すときには細部は大脳皮質の推論で埋める仕組みを選んだと考えられます。たとえるなら、脚本のあらすじや登場人物リストだけが残っていて、本番では俳優にあたる新皮質が、その都度細かいセリフや表情を即興で演じているような方式です。完璧に細部まで覚えている記憶よりも、別の新しい状況に利用しやすいように細部を切り捨て、要点だけを海馬に濃縮して残したほうが、生き延びるためには役立ちやすいと考えられます。
脳が必要としているのは「生き延びるための道具としての記憶」であって、「証拠保管庫としての記憶」ではないとも言えます。
3つ目の理由は、「未来を想像する力」との関係です。「記憶を書き換えることが、知識を育てることにもつながっている」という考え方は、いくつかの理論で支持されています。多重トレース理論などでは、古いエピソード記憶が何度も思い出されるうちに、だんだんと意味記憶、つまり事実やルールの知識の側に変身していくと考えられます。たとえば、「小学生のとき算数でこう解いた」「中学生のときも同じパターンだった」という個別の経験が積み重なると、「こういうときは分数に直して考えるといい」という一般的なコツが身につきます。完全に正確な映像記録のままでは、いつまでも小学校の解き方と中学校の解き方が並んだままで、それらをまとめて「一般的なコツ」という形にするのが難しくなります。
さらに最近の研究では、「記憶を柔らかくしておくことが創造性や問題解決にもプラスに働いている」という報告も出てきています。エピソード記憶を呼び出すときに、過去のばらばらな要素を組み合わせ直すプロセスは、違うアイデアを組み合わせて新しいひらめきを生み出す「発散的思考」や、問題を解決するためのステップを考える力を支えていると考えられています。逆に、すべての記憶が硬直して一切変わらない世界では、「別の組み合わせ」を発想する余地がなくなり、柔軟な思考が難しくなってしまうかもしれません。
最後に、「不確かさ」そのものが、じつは世界の不確かさに合っている、という考え方もあります。現実の世界は、どこまでもあいまいで、例外だらけで、将来は予測しきれません。そんな世界の中で、完全に固定された記憶だけを頼りに一直線に行動し続けるのは、むしろ危険な場合もあります。記憶が書き換わるということは、「世界が変われば、自分の理解も変えられる」という柔軟性を持つ、ということでもあります。テストで点を取る、という短い時間スケールだけで見ると不利に見えるこの仕組みも、長い進化のスパンで見れば、「多少あいまいでも更新可能な記憶」を持つ脳のほうが、生き残りには有利だったのかもしれません。
これは記憶研究の分野で長年議論されてきた「想起による記憶変容」を包括的に整理するものであり、学術的にも大きな意味を持つ整理(枠組みの提案)だと言えるでしょう。
この知見が社会にもたらす影響は小さくないかもしれません。
まずメンタルヘルスの分野では、辛い記憶を思い出しながら新しい安心できる情報を組み合わせることで、トラウマ体験の記憶を変化させて症状を和らげる可能性を探る治療法(例えばPTSD治療)への応用が研究段階で期待されています。
実際、近年の研究ではこの「再想起による書き換え」現象を利用して、マウスの嫌な記憶の感じ方が変わったり、人間の恐怖記憶に結びついた恐怖反応が弱まったと報告される研究もあります。
法律の分野では、目撃証言の信頼性を評価する際に記憶の可塑性を考慮する必要性が高まるかもしれません。
人の証言は「事実の録画テープ」ではなく、その都度再構成された物語である可能性があるためです。
裁判においても時間の経過や尋問の仕方によって証言内容が変質し得ることを念頭に置き、慎重に判断することが重要だと示唆されます。
研究チームも今回示した枠組みが未解決の問題に新たな光を当て、今後の研究の刺激になることを期待しているとコメントしており、このレビュー自体が記憶研究の次なる展開に火をつけることが期待されています。
もしかすると将来、私たちは意図的に自分の記憶を書き換えて嫌な記憶を和らげたり、過去の体験を都合よく作り変えたりできる時代が来るかもしれません。

























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実際話書いたりするときも細かいところはあえて書かないで置いておいた方が後で書き直す時は楽しいですからね。
その都度自分で考えていくっていう感じの方が。
あの時はどう考えたっけな?ってなりながら書くのは楽しいものです。
書くたびに違う作品が出来上がっていきますから。