日の光が差し込む窓際で生活するだけで血糖値変動が改善

研究では、国際共同研究チームが2型糖尿病の男女13名(平均年齢70歳)を対象に実験を行いました。
参加者たちは約4.5日間×2回の入院生活を送り、その間の日中(午前8時~午後5時)に過ごす部屋の明るや光の質(色味)だけを変える特殊な環境に置かれました。
一方の期間では、大きな窓から自然の太陽光が差し込む明るい部屋で日中を過ごしてもらいます。
もう一方の期間では、同じ部屋で窓を遮光し、蛍光灯とLEDによる人工照明(約300ルクス)のみで日中を過ごしてもらいました。
どちらの条件を先に行うかは無作為に決め、間には4週間以上の間隔をあけることで前の影響が残らないようにしています。
また食事内容や運動量、睡眠時間などは全員で統一し、「光の違い」以外の要因をできるだけ排除しました。
では、肝心の結果はどうだったのでしょうか。
最も注目すべき血糖コントロールの指標では、結果として自然光の下にいた場合の方が良好な指標がありました。
具体的には、4.5日間を通して血糖値が「正常範囲」に収まっていた時間の割合が、人工光の環境に比べて自然光の環境でわずかながら長くなったのです。
人工光では観察期間全体の約43%の時間しか血糖が正常範囲に収まっていませんでしたが、自然光では約51%とわずかに増加しました。
平均血糖値そのものは両条件でほぼ同じでしたが、自然光のほうが血糖値の急激な上下(変動幅)が分析では小さく抑えられていた点が重要です。
言い換えれば、平均点が同じでも成績のムラが減ったような安定した状態であり、体にとってはその方が望ましいと言えるでしょう。
さらにエネルギー代謝にも興味深い違いが現れました。
自然光を浴びて過ごした場合、身体がエネルギー源として脂肪をより多く利用する方向に変化していたのです。
実際に代謝データを分析すると、自然光の環境では呼吸交換比(RER:糖と脂肪のどちらを燃やしているかの目安)が低下し、脂肪の燃焼量が全体的に増える変化が確認されました。
特に正午過ぎの時間帯には、自然光下で脂肪の燃焼が有意に高まっていました。
また、体内時計の働きを反映するホルモンのリズムにも微細な変化が見られました。
夜間に分泌されるメラトニン(睡眠ホルモン)の量を調べたところ、自然光の下で過ごした日の夜(就寝前の2時間)のほうが、人工光の日に比べてメラトニン分泌量がやや多くなってる可能性も示されました。
日中に十分な自然光を浴びたことで、夜には体が「休む準備」が整い、正常な夜間ホルモン分泌が促された可能性があります。
これらの結果は総じて、昼間の光環境を変えることで体内の概日リズムが整い、代謝機能が正常化に向かう可能性を示唆しています。
今回、日中に窓からの光を取り入れたことで、参加者たちの体内時計が正常な状態に近づき、昼間の血糖安定化や脂肪の利用促進につながったと考えられます。
言い換えれば、窓際で太陽の光を浴びることは、体に正しい時刻を知らせる「目覚まし時計」のような役割を果たしたのです。



























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