ASDだと「寝付けない夜」が多い
既存の研究では、ASDのある子どもでは入眠困難や夜間覚醒といった睡眠問題が多い傾向が報告されています。
ASDで睡眠問題が多いということは、ASD特性と睡眠の乱れが関連している可能性を示唆します。
しかし、これまでの個別研究では、睡眠問題と行動問題の間に関連がある可能性は指摘されてきましたが、評価方法(保護者報告、アクチグラフィ、ポリソムノグラフィー(PSG:終夜睡眠ポリグラフ検査))、対象年齢、行動指標が研究ごとに異なり、結果の比較が難しいという課題がありました。
そこで今回の研究では、26件・計3200人以上のデータを整理し、実際それぞれの報告の間にどのような関連があるのかという点を明らかにしようとしたのです。
その結果、ASDのある子どもでは睡眠の問題が全体としておよそ40〜83%と高い頻度で見られることが改めて確認されました。
また睡眠問題が複数の行動上の困難と重なりやすいという全体的な傾向も確認され、ASDの行動理解において睡眠を切り離さずに捉える必要性が見えてきました。
興味深い点として、こだわり行動と睡眠の乱れの関連は、年齢によって傾向が異なることも報告されました。
幼児期では睡眠の乱れとこだわり行動の変動が比較的リンクしやすい一方、学童期以降ではその関連がやや弱まる傾向が見られ、研究によって報告が異なる原因になっていたようです。
こうした知見は、ASD支援の現場で従来軽視されがちだった「睡眠」と「行動」の関係を改めて見直す必要性を示しています。
従来は、かんしゃくや不安、多動といった“日中に目立つ行動”に焦点が当てられやすく、睡眠の乱れは生活習慣の一部として別扱いにされることが少なくありませんでした。
しかし、今回のレビューにより、睡眠の乱れが情緒調整や注意の維持に直接関わる可能性が明確になり、行動面の支援だけでは見落とされる問題があることが示されました。
睡眠状態を整えることは、行動支援全体を安定させるための重要な土台として位置づけられるべきだと考えられます。
また今回の研究では、寝付きにくいか、よく目が覚めるかで、日中に異なる影響が出やすいことも明らかになりました。

























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