坂を転がる雨粒は「ピーナッツ型」と「ドーナツ型」になる
詳細な解析の結果、サンドボールには大きく分けて2つの安定した形があることが分かりました。
1つ目は「ピーナッツ型」と呼ばれる形です。
これは中央がくびれた細長い形をしており、比較的軽く、砂粒は主に表面に付着しています。
このタイプのサンドボールは転がりながら回転し、砂を拾い続けますが、ある程度まで成長すると質量が頭打ちになる傾向がありました。
もう1つは「ドーナツ型」と呼ばれる形です。
このタイプは砂粒を内部まで大量に取り込み、輪のような形になります。
砂が詰まりすぎた状態では粒同士がぎゅうぎゅうに押し合ってほとんど動けなくなり、「固まり」に近い状態に入ります。
ドーナツ型のサンドボールは非常に高密度で、高速回転の末に割れて分裂することもありました。
分裂が起きると複数の小さなサンドボールが生まれ、それぞれがさらに斜面を削っていくため、侵食が連鎖的に拡大します。
従来注目されてきたスプラッシュ侵食は、雨粒が当たった瞬間に起きる局所的な現象でした。
一方でサンドボールは斜面を転がり続けるため、時間をかけて連続的に土壌を運びます。
その結果、最終的に移動する土壌量が積み重なり、最大で10倍もの差が生まれるのです。
この発見は、土壌侵食モデルにとって重要な意味を持ちます。
多くの既存のモデルは、雨粒が地面に衝突したときのスプラッシュに主に着目してきたため、転がりながら土壌を運ぶ効果を十分に織り込めておらず、実際の侵食量を過小評価している可能性があります。
特に乾いた斜面では、サンドボールによる侵食が無視できない役割を果たしていると考えられます。
一方で、湿った土壌や植生のある地面、異なる粒径の土壌でも同じ現象が起きるのかについては、まだ十分に検証されていません。
今後は、より多様な環境条件での検証が進められることで、この現象が自然界でどこまで一般的なのかが明らかになっていくでしょう。
雨粒は地面に当たって終わりではありません。
転がり、集め、形を変えながら、想像以上の力で地表を削っている可能性があるのです。


























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