史上最も変な生き物「ハルキゲニア」の食事風景が化石に写されていた

ハルキゲニアはどんなふうに食事をしていたのか?
謎を解明するため研究者たちは、これまでに掘り出された化石を再度詳細に調べることにしました。
特に着目されたのは「クラゲ型生物とハルキゲニアが一緒に保存されたもの」でした。
カンブリア紀の海底では、ゼリー状の体を持つクラゲやクシクラゲが大量に生き、死んで沈んでいきました。
軟らかい体は化石には残りにくいですが、当時の生態系にとっては重要な栄養のかたまりです。
もしハルキゲニアがこの「掃除役」をしていたなら、クラゲとハルキゲニアがセットになっている化石から何らかのヒントが得られるかもしれません。
結果、複数の小さなハルキゲニア個体がクラゲの仲間の死骸に群がっている化石が確認されました。
各個体は死骸の上で均等にばらけて配置されており、互いに邪魔しないように「食べる場所」を分け合っていたようにも見えました。
硬い部分がまったくないゼリー状の死骸を前にしても、ハルキゲニアたちは棘だらけの小さな体で器用に集まり、まさに宴会のように体液を吸っていたのでしょう。
次に、ハルキゲニアの頭部と消化管のつくりに注目しました。
普通、肉をかみちぎる捕食者なら、獲物をつかむための太いあごや、刺すための鋭い牙が必要です。
しかしハルキゲニアの口周りには、そのようなパーツが見当たりません。
その一方で、頭の先が少しふくらんでいて、その内部に広めの空間と細かい歯のような突起が並んでいる構造が確認されました。
これは、水ごと餌の中身を吸い込み、内部の突起でこして取り込む「吸引摂食(suction feeding:吸って食べる方法)」に向いたつくりです。
研究者たちは、この構造が現生のウミグモ類の口と前腸にも見られることに注目しました。
ウミグモは長い管を海綿やクラゲなどに差し込み、内部の体液を吸い取って食べます。
ハルキゲニアの頭部と前腸には、このウミグモの吸い取り装置と機能的に対応する点がいくつも見つかったのです。
こうした配置と構造から、著者たちは、この複合化石を「クラゲ型生物の死骸に小さなハルキゲニアが群がり、その体液をストローのように吸い取っていた瞬間をとらえたスナップショット」と解釈できると考えています。

今回の研究により、ハルキゲニアは、いわば「クラゲの死骸から体液を吸うストロー生物」であり、カンブリア海の海底でゼリー状の死骸を片づける小さな掃除屋として働いていた可能性が示されました。
これは、ただ見た目が奇妙なだけの存在だったハルキゲニアに、ようやく具体的な生活のイメージが与えられたという点で、大きな一歩です。
著者たちはさらに踏み込み、この吸引摂食というスタイルが、カギムシ類の祖先グループにとって「祖先的で、広く使われていた食べ方」だった可能性を語っています。
もしそうだとすれば、私たちがよく知る昆虫やクモ、甲殻類の遠いルーツのどこかに、「ストローで体液を吸う」ステージがあったのかもしれない、と想像することもできます。
(※他にも論文では寄生のような食べ方もしていた可能性についても触れています)
また論文では、小型で装甲をまとった葉足動物たちが、軟らかい死骸を分解するうえで重要な役割を果たし“ごみ処理班”を担当した可能性があると述べられています。
海底に落ちたクラゲのゼリーを、小さなトゲトゲたちがわっと取り囲み、中身だけをストローのように吸い上げる──そんな少しぞっとする光景が、5億年の海底で繰り広げられていたのかもしれません。























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