トンネル効果とは「別の世界線へ引っ越す」ことだったのかもしれない
トンネル効果とは「別の世界線へ引っ越す」ことだったのかもしれない / Credit:川勝康弘
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トンネル効果とは「別の世界線へ引っ越す」ことだったのかもしれない (3/3)

2026.02.06 21:00:45 Friday

前ページ「トンネル確率=トンネル済み世界の重さ」という発想

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世界線の物語があると、量子技術の未来が少しだけ見えやすくなる

世界線の物語があると、量子技術の未来が少しだけ見えやすくなる
世界線の物語があると、量子技術の未来が少しだけ見えやすくなる / Credit:Canva

今回の研究では、「量子トンネル効果は、粒子がこっそり壁をすり抜けているのではなく、『世界のほうがトンネル済み世界と反射世界に分かれている』と考えても、ちゃんと従来の計算と矛盾しない」という見方が提案されています。

さらに、超伝導回路で起きるマクロ量子トンネル現象をこの枠組みで読み替えると、「世界がその二つの現実に分かれきるまでの時間」は、およそ百十ピコ秒以上、つまり一兆分の一秒が1ピコ秒なので、その百十倍以上だ、という“世界分岐タイマー”まで提案されています。

著者は、「トンネル確率はトンネルした世界の枝の重みの合計として理解できる」「トンネル時間は、分岐イベントのデコヒーレンス(重ね合わせがほどけること)時間を積み重ねたものだ」というニュアンスにて、あえて物語的な言い回しを使ってまとめています。

ここでいう枝の重みとは、「どの世界線がどれくらい“起こりやすいか”」を表す量であり、確率の正体を「自分がどの世界線にいるか分からないこと」として説明しようとする試みです。

また、超伝導回路で観測されたマクロ量子トンネルの遅れ時間については、「歴史的に計られてきた脱出率を、世界が増えていくスピードに翻訳したものだ」として、新しい時間の物差しに格上げしようとしています。

もっとも著者はこの理論が完璧とまでは言っていません。

またこの研究が「平行世界の存在を証明した!」と言っているわけでもありません。

多世界解釈には「複数の現実が本当に存在するのかという存在論の問題」や「そもそも反証しにくいのではないかという指摘」など、厳しい批判が今でも残っていると認めています。

それでもなお、「量子トンネルのような、古典的には禁じられた奇妙な現象を、観測者や環境まで含めた大きな波の分岐として、ひとつの絵にまとめてくれる可能性がある」として、多世界的な見方の“エレガントさ”を評価しているのです。

また「確率とはいったい何なのか」「自分がどの世界線の自分なのか」といった、ふだんは哲学のコーナーに追いやられがちな問いに、量子力学なりの具体的な数字を持ち込んだ点がユニークです。

世界分岐時間という考え方が広まれば、将来、マクロ量子トンネル実験のより精密なデータ解析から、「このくらいのスピードで世界が分かれているとみなすと都合がいい」といった議論が生まれるかもしれません。

そうなれば、量子コンピュータや量子センサーといった技術も、「世界線の束をどううまく扱うか」という新しいストーリーで語られるようになるでしょう。

私たちの毎日は、スマホの電源を入れたり、スイッチを押したり、小さな選択の連続でできています。

今回の理論が正しければ、そうした一つ一つの出来事の裏側で、量子トンネルや測定のたびに、世界はこっそり枝を増やしているのかもしれません。

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