「優劣」ではなく「思考ルート」の違い
これまで、創造性の研究においてADHDとの関連性は「一貫性がない(弱い)」とされてきました。しかし今回の研究は、その理由を上手く説明しています。
これまでの研究は「ひらめき」と「分析」を区別せずに測定していたため、「分析が得意な層」と「ひらめきが得意な層」の成績が相殺され、全体としての相関が見えなくなっていました。
しかし、問題解決の道筋を含めて考えると、ADHD傾向との関連性が見えてきます。
この研究では、分析(analysis)も創造的な問題解決の一つのルートとして扱われています。
「分析」は、答えに向かって候補を意識的に扱い、手がかりを順に検討していく道筋です。この過程では、注意を保ち、途中の情報を頭の中に置いたまま、方針を切り替える力が重要になります。
一方のひらめき(insight)は、本人の感覚として「突然まとまった答えが見える」体験に近いものです。
「ひらめき」は偶然の魔法ではなく、意識の外側で連想や探索が進み、ある瞬間にまとまって意識に上がる現象として説明されます。
研究チームが注目したのは、ADHD症状の強さが、この二つの思考ルートの「使われやすさ」に関係し得る点でした。
ADHD傾向が高いほどひらめき解が増え、分析解が減るという傾向は、回答方法を区別せずに正解数だけ見た場合相殺されてしまい、関係が弱く見える場合があります。
それが、これまでの研究では結果がそろいにくかった理由の一端かもしれません。
「強み」の決め打ちを避けるために
この研究は「ADHDなら創造性が高い」と言い切るものではありません。
研究が扱ったのは主に大学生の参加者で、自己記入式尺度による症状の強さと、特定の言語パズル課題における解き方の関係です。
ひらめきか分析かの区別は参加者の自己報告に基づいています。
そのため、別の年齢層や診断を受けた集団、異なるタイプの創造的課題でも同じ傾向が見られるかは、今後の検討が必要です。
それでもこの研究は、ADHDを単なる「欠点」として語らないための具体的な手がかりを示しました。
最初に述べたスティーブ・ジョブズについても、彼は「市場調査」を行って分析することは意味がないとして、「直感(Intuition)」を重視していたと言われます。
また彼は、スタンフォード大学でスピーチした際、一見無関係だった経験(カリグラフィーの授業など)が、後になってマッキントッシュの開発につながったと話しています。
ジョブズが本当にADHDだったのかは不明ですが、こうした逸話は確かに今回の研究結果と一致しているように見えます。
研究者は今回の結果から「クリエイティブな分野においては、ADHDの特性が強力な利点になり得る」と指摘しています 。
そのためADHD傾向が高い人は、それを欠点と見なさずひらめきを活かせる職場を見つければ活躍の機会が得られるかも知れません。
しかし、現実社会では「素晴らしいアイデア」以上に「事務処理の正確さ」や「納期の遵守」といった遂行能力が求められる場面が多く、単にひらめきがあるだけでは評価されにくいのが実情です。
こうした研究が進むことで、社会が上手く能力に合わせて人材を活用できるようになれば良いですね。




























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