脳モデルに「仮想の体」をつけたら何が起きた?

どれだけ脳の中で信号が走っても、それを受け取って動く体がなければ、外から見れば何も起きていないのと同じです。
例えるなら、頭の中で完璧に作戦を立てているのに、実際には一歩も動けない状態です。
そこで今回イーオンが行ったのは、この脳に仮想の体を与えることでした。
具体的には、コンピューターの中でハエが感じる刺激を再現し、それを脳モデルに伝えます。
脳はその情報を受け取ると、自分の配線図にしたがって体へ向かう信号を出します。
すると仮想空間のハエは実際に動き出し、歩いたり、身づくろいをしたり、食べたりという行動をとるようになります。
さらに面白いのは、その行動がまた新しい刺激として脳に戻ってくることです。
ハエが前に進めば周囲から入る刺激が変わり、体が汚れればその情報が感覚として脳に伝わります。
これにより、「感じる」「考える」「動く」「また感じる」という、生き物らしい行動の輪っかが完成します。
映像の中でハエが食べ物へ向かうのも、ただの演出ではありません。
甘い刺激が足や口に伝わった結果、脳の中で「食べる行動」を引き起こす信号が生まれます。
体にほこりがついたときに身づくろいをする動作も同じで、触角まわりに届いた感覚が身づくろいの回路を刺激しています。
会社の技術説明によると、この循環は千分の十五秒ごとに細かく繰り返されているといいます。
仮想世界のハエが滑らかに動いて見えるのも、この速いやりとりが裏側で続いているおかげなのです。
これまで脳と体をつなげた研究自体は、他にもいろいろありましたが、多くの場合はあらかじめ人間が「こう動いてね」と教えたり、人工知能に「強化学習」という方法で学ばせたりしたものでした。
いわば、動きの裏付けが人工知能ベースで、生物の実際の脳の配線そのものには直接依存しないものでした。
しかし今回の実験では、あくまで「本物のハエの脳の配線図」を中核に信号を体を動かす制御の仕組みへ渡す形でした。
そのためイーオンは「これはちょっとした改良ではなく、質的にまったく違うレベルに達した」と位置づけています。
仮想の体も、いわゆる「それっぽい動き」の人形ではありません。
イーオンの技術解説では、公開済みの身体モデル「ニューロメックフライ」を土台にし、ハエの体を精密な三次元モデルとして作り、87の関節が独立に動くとしています。
動かす舞台には、物理シミュレーション環境「ムジョコ」が使われています。
つまり、足が床を押せば反作用が返り、摩擦が足取りを左右し、姿勢が崩れれば転びます。
脳からの合図が、こうした物理法則の制約を受けるところまで再現したわけです。





























![よーく聞いてね!3つのヒントで学ぶ!どうぶつカード ([バラエティ])](https://m.media-amazon.com/images/I/51zT3OcliFL._SL500_.jpg)






















