ダンゴムシは食べた鉱石を作り変えて鎧にする

研究チームはまず、ダンゴムシに3種類の“石”を食べさせました。
ひとつはカルサイト、もうひとつはアラゴナイト、そして最後は石英です。
・カルサイトは、炭酸カルシウムからできた鉱物で、石灰岩や大理石の主成分としてよく知られています。
・アラゴナイトも、炭酸カルシウムからできた鉱物ですが中の原子の並び方がカルサイトとは違っていて、貝殻やサンゴ、真珠などにも見られる、いわば別バージョンの炭酸カルシウムです。
・石英は、炭酸カルシウムではなく、二酸化ケイ素からできた鉱物です。
砂や岩石の中にごく普通に含まれる、とてもありふれた鉱物ですが、ダンゴムシの殻づくりに必要なカルシウムは含んでいません。
つまり「材料の種類だけを変えて、それ以外は同じ条件」で育てたわけです。
そして約60日後、ダンゴムシの背中の殻を取り出し、顕微鏡で形を観察し、さらに光やX線を使って「中にどんな鉱物ができているのか」を詳しく調べました。
まず結果の第一段階として見えてきたのは、「石の種類で殻の育ち方が変わる」という事実でした。
石英を食べさせたダンゴムシは、殻があまり厚くならず、全体的に頼りない構造のままでした。
一方で、カルサイトやアラゴナイトを食べたダンゴムシは、外側も内側もきちんと発達した、しっかりした層構造の殻を作っていました。
ここでまず重要なのは、ダンゴムシは「石なら何でもいい」わけではないという点です。
体を作るためには、やはり炭酸カルシウムという材料が必要で、石英のような別の鉱物では代用できませんでした。
つまりダンゴムシの殻づくりには、使える鉱物と使えない鉱物がある、ということです。
しかし本当に驚くべきなのは、ここから先です。
放射光X線回折という方法で、最終的に殻の中にある結晶を調べたところ、検出されたのはすべてカルサイトでした。
アラゴナイトを食べていたはずのダンゴムシでも、完成した殻ではアラゴナイトはでは検出されませんでした(X線回折での調査)。
つまりダンゴムシは、外から入ってきた鉱物の「型」に従っているのではなく、体内でいったん別の中間状態を経て、最終的にカルサイトへ導いていることが示されました。
しかし、分子レベルの並び方の違いを、ダンゴムシはどうやって制御しているのでしょうか?
あの小さな丸い体のどこに、分子制御機構が隠されていたのでしょうか?





















































