なぜADHDやASDは見逃されるのか?未診断のままだと何が起こるのか?
ADHDは注意の向け方や行動のコントロールが難しくなりやすい状態で、集中の波が大きい、衝動的に動いてしまう、計画通りに進めにくいといった特徴があります。
一方ASDは、対人コミュニケーションの取り方や感覚の感じ方に独特の傾向があり、空気を読むことが難しい、特定のことに強く集中する、刺激に敏感または鈍感といった特徴が見られます。
これらは性格ではなく、生まれつきの脳の働き方の違いです。
そしてこれらADHDやASDは見逃されることがあります。
多くの場合、特性そのものは子どもの頃からありましたが、それが周囲から見えにくい場合があるのです。
見逃されやすいのは、一見すると「普通にやれている」人たちです。
学校の成績が悪くない、会話もそれなりにこなせる、仕事も何とか回している。そんな人は周囲から「困っていない」と見なされやすくなります。
ですが実際には、表面上うまく見せるために強い無理を重ねていることがあります。
このとき重要になるのが「マスキング」です。
これは、ASDの研究でよく調べられている現象で、自分の特性を隠したり、周囲のふるまいをまねたりして、社会の中で目立たないようにすることを指します。
2023年の研究では、とくに女性で多い可能性が示唆されています。
ここで注意したいのは、マスキングは「適応できている証拠」とは言い切れないことです。
むしろ、外からは問題が見えにくくなる一方で、本人の側に強い疲労や混乱がたまりやすくなります。
上記の研究でも、マスキングは不安や抑うつなどのメンタルヘルス上の問題と関連する可能性が指摘されています。
未診断のまま生きることのつらさは、単に「支援が受けられない」ことにとどまらないのです。
実際、ある研究では、ASDの成人で不安障害が約42%、うつ病が約37%にのぼると報告されています。
ADHDでも、半数を超える人に何らかの精神疾患が併存するとされます。
これは、本人の性格が弱いからではありません。
自分の脳の働き方に合わない環境や期待の中で、長く調整し続けてきたことの積み重ねと考えられます。
しかも、ここに「努力すれば解決できる」という考え方が重なると、問題はさらに深くなります。
一般的な自己改善のアドバイスでは、生活習慣を整える、時間管理を徹底する、感情をうまくコントロールするといったことが勧められます。
もちろん、こうした工夫が役立つ場面もあります。
ですがADHDやASDでは、計画を立てる、時間を管理する、感情を整えるといった働き方そのものに、脳の特性として違いがあります。
そのため、発達障害をもたない人向けに作られた「頑張り方」をそのまま当てはめても、うまくいかないことがあります。
すると本人は、「やり方が合っていない」のではなく、「自分の努力が足りないのだ」と考えてしまいやすいのです。
これは、合わない道具で難しい作業を続けているようなものです。
真面目な人ほど、合わない方法でさらに頑張ってしまい、そのぶん疲れも深くなっていきます。
つまり、成人までADHDやASDと診断されてこなかった人の多くは、「問題がなかった」のではなく、「問題が見えにくかった」というだけです。
そして困難の原因が分からないまま、自分を責め続けてきた可能性も高いのです。
では、そうした人々が大人になってから診断を受けたとき、彼らにはどんな影響が及ぶのでしょうか。


























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