男性用避妊薬の『やめれば完全元通り』をマウスで実証
男性用避妊薬の『やめれば完全元通り』をマウスで実証 / Credit:Canva
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男性用避妊薬の『やめれば完全元通り』をマウスで実証 (2/3)

2026.04.18 21:00:48 Saturday

前ページ毎秒1000個の精子工場をどう止めるか

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精巣だけにある「指揮者タンパク質」を狙う

精巣だけにある「指揮者タンパク質」を狙う
精巣だけにある「指揮者タンパク質」を狙う / 精巣の管を輪切りにした顕微鏡画像です。 緑色に光っているのは、いま減数分裂の真っ最中にある細胞。 右上に見えるピンク色の小さな点は、形ができつつある発達途中の精子。 中央左のピンク色の細長い細胞は、すでにしっぽが生えた成熟精子です。 そして左下の白〜灰色の細胞が、精子の大元となる幹細胞(精原細胞)。 今回の研究では、この幹細胞を傷つけずに精子産生だけを止めることを目指しました。/Credit:Saloni Dhopte/Cohen Lab

では具体的に、その”真ん中の段階”のどこを狙うのか。

ここで重要になるのが「数千の遺伝子が一気に読み出される爆発的な転写現象(パキテン転写バースト)」です。

名前からして大げさですが、実際大げさなイベントです。

精子完成に必要な数千の部品レシピを、細胞が一気に読み出す瞬間——全生産ラインに一斉号令がかかる、工場の祭りのような時間。

この祭りが中止になれば、精子はその間完成しません。

この大号令を出している指揮者が、BRDTというタンパク質です。

そしてこのBRDT、驚くべき性質を持っています。

人間の体の中で、精巣にしか存在しないのです。

脳にもない、心臓にもない、肝臓にもない。

精巣の専属スタッフです。

このBRDTを狙うために現在使える薬として知られているのが「JQ1」という薬です。

もともとはがん研究のために作られたJQ1ですが、2012年にテキサス・ベイラー医科大学のMatzukらのグループが男性避妊薬の候補として初めて報告しました。

ちなみにJQ1という名前は、この化合物を合成したハーバード大学の化学者ジェームズ・ブラッドナー(James Qi Bradner)のイニシャルに由来します。

しかし、この”本当に元に戻るのか”という根本的な問いへの回答は、長らく保留されたままでした。

精子の数は戻っても、遺伝子の働きは元に戻っているのか。

染色体の組み換えに狂いは残らないのか。

そして最も重要な問い——その後に生まれる子どもに影響はないのか。

ここを徹底的に検証した研究が、これまで存在しなかったのです。

次ページ安全性を子ども世代まで追いかけた

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