1億年前の虫は『カニのハサミ』を持っていたと判明
1億年前の虫は『カニのハサミ』を持っていたと判明 / Credit: Haug et al., 2026 / Insects / CC BY 4.0
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1億年前の虫は『カニのハサミ』を持っていたと判明 (3/4)

2026.05.28 17:30:35 Thursday

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1億年前の昆虫は「カニのハサミ」をどうやって獲得したのか?

1億年前の昆虫は「カニのハサミ」をどうやって獲得したのか?
1億年前の昆虫は「カニのハサミ」をどうやって獲得したのか? / Credit: Haug et al., 2026 / Insects / CC BY 4.0

新種の素性は明らかになりました。

次に気になるのは──「この不思議なハサミは、いったいどうやって生まれたのか?」という問いです。

研究者たちは、化石を詳しく分析する中で、ある重要な進化のシナリオを示唆しました。

それは、「この新種のカニ型ハサミは、もともと折り畳みナイフ式だった脚から、少しずつ作り変えられて進化した」というものです。

もともとあった折り畳みナイフ式の脚を、少しずつチューンナップして、最終的にペンチ式のハサミへと改造していったというプロセスが垣間見えるのです。

先に触れたように、「本物のハサミ」を持つ昆虫は、これまで知られていた3つのグループ(アザミウマ、カマバチ、カニカメムシ)でしたが、今回の研究により新種を加えた、合計4グループになることがわかりました。

研究者たちはこれらはどれも同じプロセスを経て折り畳みナイフ式から本物のカニ型のハサミになった可能性があると考えています。

しかしこのプロセスに加えて、そのハサミが虫のどの部分を変化させて作られたかという点についても大きな違いがありました。

昆虫の脚は、カニやエビの脚と同じように、根元から先端まで、いくつもの『節(パーツ)』が連結してできています。

食卓のカニ脚を思い浮かべると、太い付け根、すらりと伸びる中央、その先の細かい部分、そして爪──と、いくつかの節に分かれています

研究者たちは新種も加えた4つのハサミ昆虫は、この一連の節のうち、「ハサミの材料」した部分が全て異なっていることに気付きました。

具体的には:

カマバチ ── 脚のいちばん先端のパーツ+爪

カニカメムシ ── 中央のパーツ+先端

アザミウマの一部 ── 根元のパーツ+中央(ただし真の鋏脚かは議論の余地あり)

今回の新種 ── 根元のパーツ+中央+先端

4種類の昆虫が、まったく違う部品の組み合わせから出発して、結果的に同じ「ハサミ」という機能を作り上げていたわけです。

なぜ別々の系統の昆虫が、違う材料を使ってまで、似たような「ハサミ」にたどり着くのでしょうか?

研究者たちが示唆した答えは、シンプルかつ深いものでした。

「形を主に決めているのは、血のつながり(系統)よりも、むしろ機能(使い道)の制約のほうではないか」

たとえば、空を飛ぶという機能を持つ生き物は、鳥でも、コウモリでも、昆虫でも、結局みんな似たような「翼」を持っています。

同じことが「ハサミ」にも当てはまります。

「獲物をガッチリ挟みたい」という同じ目的に対して、自然が出せる答えの形は、決まった範囲に収束する。

だからこそ別々の系統の昆虫たちが、それぞれ独自に「カニのハサミ」を発明してきた──そう考えられているのです。

生物学で「収れん進化」と呼ばれる現象が、虫のハサミにも起きていたのです。

加えて研究者たちは、ハサミの形そのものに、「それがどうやって生まれたのか」を物語る手がかりが隠れていることに気づきました。

注目したのは、ハサミの「固定の指」──動かないほうの指の向きです。

生まれつきハサミだったカニの場合、固定の指は、矢印の指す「前方」へまっすぐ伸びています。

ところが、折りたたみナイフ式から進化したハサミ──今回の新種と、近縁のカニカメムシの仲間では、固定の指が矢印の「真横」へとニュッと突き出していたのです。

彼らのハサミは「ゼロからの発明」ではなく、「折り畳みナイフ式の脚の”改造”」で生まれたものなので、改造のなごりとして、固定の指が横向きに残ってしまった、と考えられるのです。

つまり「固定の指が横向き」という特徴は、そのハサミが折りたたみナイフ式から進化してきたことの”証拠”になり得るのです。

この関係を逆に使えば、未来の発見を予測できます。

研究者たちはこう示唆しています。

「今後、別の系統でも『折り畳みナイフ式からハサミ式への進化』が見つかれば、そのハサミの固定の指も、きっと横向きに伸びているはずだ」と。

進化はランダムでデタラメに見えますが、実は一定の傾向に縛られている。

だからこそ、形に残された小さな”改造のあと”から、まだ見ぬ化石の姿さえ先取りできるのです。

これは科学にとって、未来の発見を先取りする、価値ある「予測」だと言えます。

次ページ1億年前の森は、今より「進化の実験場」だった

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