1億年前の森は、今より「進化の実験場」だった

今回の発見は、白亜紀の森が、私たちの現代よりも多彩な世界だったことも物語っています。
論文によると、ミャンマー琥珀の中から見つかる「物をつかむ脚」のバリエーションは、一部については現代の昆虫を上回るほど豊かだったというのです。
私たちはなんとなく「昔の生き物は今より単純で、進化していくにつれて多様化してきた」とイメージしがちです。
でも実際には、少なくとも「物をつかむ脚」については、1億年前の森のほうが、今より活発に進化の実験が行われていた可能性があるのです。
しかも、ミャンマー琥珀からは「物をつかむ脚」だけでなく、その逆──捕食者から身を守るための様々な防御装置もたくさん見つかっています。
トゲ、擬態(ぎたい:周囲に紛れて目立たなくなる工夫)、カモフラージュ。
攻撃と防御の道具立てが、両方とも充実していたのです。
加えてこの化石にはもう一つ、研究者たち自身も後から気づいた、驚きの事実が隠されていました。
ハサミを構えた1億年前の小さなハンター──と思いきや。
実はこの化石、まだ大人にもなりきれていない、森をさまよう”幼い個体”だったかもしれないのです。
(カメムシの仲間は、チョウのように「さなぎ」を経ない成長をするため、この若い段階は専門的には「若虫(じゃくちゅう)」と呼ばれます。)
母を探していたのか、新しい狩り場を探していたのか、理由は誰にも分かりません。
けれども確かなことは、1億年前のある日、まだ大人にもなりきれていない小さな昆虫が、不釣り合いに大きなハサミを構えながら、白亜紀の森をさまよっていた、ということです。
そしてその子は、ある日ポタリと落ちた樹液の罠に捕まり、1億年もの長い長い時間をかけて、現代の私たちのもとへやってきました。
研究チームは今後も、ほかの琥珀化石を調べていくとしています。




















































