現実世界ではノイズも多い
さて、ファインマンの出した答えが正しいことも、その実践方法もわかりました。
ではこれで、すべて解決でしょうか?
残念ながら、そうではないようです。
研究者たちは、現実世界の複雑さが、いつも理想的な選択をさせてくれるとは限らないことに、はっきり言及しています。
たとえば実際の外食には、お店までの移動時間もかかるし、お金もかかる。同じ料理を食べ続ければ飽きてくるし、その日の気分や、一緒に行く人の好みだって関係してくる、と述べています。
今回の実験では、そうした現実の複雑さは、いったん脇に置かれていました。
お店の美味しさは一度わかれば変わらず、探すのにコストもかからない——いわば「きれいに整えられた理想の街」での話です。
研究チーム自身も、そこは今後の課題だと正直に認めています。
ですから、「この公式どおりにすれば外食が必ず幸せになる!」とまでは、言い切れません。
それでも、この研究が私たちにくれるヒントは、案外あなどれません。
グリフィス氏は、実生活への応用について、こう述べています。
「ファインマンの解よりちょっと単純だけど、実はかなりうまくいくんです。コツは、合格ラインを持つこと。そして、終わりに近づくにつれて、それを下げていくこと。それさえやっていれば、まあ、かなりうまくいきますよ」。
40年以上前、タイ料理店でファインマンが走り書きした小さなメモ。
それは時を超えて解読され、最適だと証明され、さらに広い世界へと一般化され、ついには「私たち人間が、いかに賢く悩み、いかに上手に決断しているか」という、ちょっと誇らしい真実まで照らし出してくれました。
もしあなたが今、さまざまな決断で悩んでいるのなら——最初は高望みで、かまいません。けれど、残された時間が少なくなってきたら、少しずつ望みのハードルを下げていく。
それが「最適」へとつながる鍵になります。
私たちが自然と行っているその心の動きは、ノーベル賞物理学者が紙きれに書きつけた「正解」と、ちゃんと地続きだったのです。
次のページでは、誰でも使えるように「ファイマン流のお店選びマニュアル」を紹介します。






























