メモの内容

ファインマンのメモは、ランチの席で走り書きした「2枚の紙」です。1枚目は計算途中や書き直し(消し跡)だらけの“考えながら解いたページ”、2枚目は答えを清書した“きれいなページ”、という構成になっています。字が癖だらけで長年「解読不能」とされてきましたが、研究者のグリフィス氏が「これは最適停止問題(いつ探すのをやめるかを決める問題)の閾値の解き方だ」と見抜いたことで、ようやく筋が通りました。
まずいちばん上で、問題の前提を置いています。「店の点数(スコア)は0〜1のあいだで均等にばらつく」「平均はだいたい真ん中(メモの“est.≈50”は、100点満点なら50点の意)」という、単純化した世界の設定です。右上にいくつか描かれた曲線のスケッチは、この“点数のばらつき”や確率(面積)を目で確かめるための図とみられます。
次に、いちばん簡単な「2泊だけ」のケースを手始めに解きます。「今夜ある店Xに入り、その点が基準(閾値)を超えていたら明日も同じXへ、超えていなければ別の店を試す」という作戦の“期待できる合計点”を、積分(∫…dx=ばらつき全体をならして合計する計算)を使って書き出しています。そして、その合計点がいちばん高くなる基準を求めると、ちょうど50%(0.5)になる——これが最初の突破口となりました。
そこから一般のケースへの拡張に入ります。店の点と基準Pの大小で「1.」「2.」「3.」と場合分けをしながら、残りの泊数を変数にしていきます。中ほどの「n remain(残りn泊)」のくだりが核心で、「基準を超える店に当たったら、以後はずっとその店に通う(残り回数ぶん得点を稼ぐ)」という形で式を立て、整理していくと、残りn泊のときの最適な基準=√n ÷(√n+1)という結論にたどり着きます。残りが多いほど基準は高く、最終夜には平均(0.5)まで下がる、という例の式です。
いちばん下では、出てきた式を逆向きに使い、「ある基準Pに対応する残り泊数は(P/(1−P))²になる」という関係を書き、具体的な数字を当てはめて式の振る舞いを検算しています。答えが出たあとに数字を入れて確かめる——いかにも物理学者らしい手つきです。
そして2枚目は、こうして得た答えを、書き直しなしできれいにまとめ直した清書ページ、というわけです。
一見ただの数式の落書きですが、上から下へ「前提を置く→いちばん簡単な場合を解く→一般化する→検算する」という、問題解決のお手本のような流れがそのまま刻まれているのです。


























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