その3「私には、一生変わらない”私”がいる」
3つ目の思い込みは、「私には、一生変わらない“私”がいる」という考えです。
人はつい、「自分はこういう人間だから」と考えます。
過去の性格、失敗、習慣、他人からの評価をもとに、自分という存在を固定してしまうのです。
しかし、「変わらない私」が本当にどこかにあるのかという問題は、哲学でも長く議論されてきました。
この考え方に対して、スコットランドの哲学者デイヴィッド・ヒュームは、興味深い疑問を投げかけました。
ヒュームによれば、自分の内側をよく観察しても、永遠に変わらない「私」そのものは見つかりません。
そこにあるのは、思考、感覚、記憶、感情、欲望といった、移り変わる経験の連なりです。
つまり、私たちはどこかに固定された核を持つ存在というより、多くの経験が束になり、流れ続けている存在だと考えられるのです。
仏教の「無我」の考え方にも、これに近い発想があります。
私たちが普段「自分」だと思っているものは、変わらない実体ではなく、身体、感覚、記憶、感情、意識などが一時的に組み合わさったものだと見なされます。
もちろん、これは「自分など存在しない」と単純に言いたいわけではありません。
重要なのは、自分を過去の性格や失敗に閉じ込めすぎないことです。
人は変化し、成長し、考え方を更新できる存在です。
「自分はこういう人間だから仕方ない」という言葉は、ときに自分を守る盾になります。
しかし同時に、それは自分の可能性を閉じ込める檻にもなってしまいます。
哲学が教えているのは、「本当の私は一生変わらない」と決めつけるのではなく、変化し続ける存在として自分を見つめ直すことの大切さです。

























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