何のために樹脂を分泌していたのか?
化学分析では、今回の琥珀にセスキテルペノイドやジテルペノイドなどの物質が含まれていることが分かりました。
その組成は、現生の針葉樹がつくる樹脂に広く似ていました。
ただし、これは3億8500万年前に現在の針葉樹が生えていたという意味ではありません。
当時は、針葉樹を含む種子植物が本格的に出現して多様化するよりも前の時代です。
今回の樹脂をつくったのは、種子をつくらない初期の維管束植物だったと考えられます。
周辺から見つかっている植物化石を踏まえると、樹木状の小葉植物や前裸子植物などが候補になりますが、樹脂の生産者を特定できる直接的な証拠はありません。
それでも、種子植物以前の植物が、現生の針葉樹型樹脂に似た複雑な化合物を生産できたことは重要です。
樹脂は一般に、植物が負った傷を素早くふさぎ、菌類や微生物の侵入を防ぎ、植物を食べる動物を遠ざける働きを持ちます。
しかし中期デボン紀には、節足動物が維管束植物を大規模に食べていたことを示す証拠は、まだ限られています。
そのため、チームは、初期の樹脂が主に植物食昆虫への防御として生まれたのではなく、山火事や物理的な損傷で生じた傷をふさぎ、寄生性の菌類や微生物から植物を守るために役立っていた可能性を指摘しています。
もちろん、今回の琥珀だけから樹脂の用途を直接証明することはできません。
それでも樹脂生産能力は、木材、大きな葉、深い根などの進化と並んで、初期の維管束植物が過酷な陸上環境へ分布を広げるうえで重要な武器になった可能性があります。
今回発見された琥珀は、目を引く宝石のような姿ではなく、石炭の中に埋もれた顕微鏡サイズの粒子でした。
しかしその小さな粒子は、植物が少なくとも3億8500万年前には、複雑な化学物質を使って傷や外敵から身を守っていたことを示しています。
さらに古い時代の石炭や堆積物にも、まだ琥珀だと気づかれていない微小な樹脂が眠っているかもしれません。
「世界最古」の記録は、今後さらに塗り替えられる可能性があるのです。






























