待ち受けていたのは、恐るべき悲劇…
先に孵化したエジプトガンのヒナの1羽は、誕生から約2日後、巣の縁へ歩いていき、そのまま約30メートル下へ飛び降りました。
高い場所で孵化したカモ科のヒナが地上へ飛び降りること自体は、本来の離巣行動として不自然ではありません。
ただし今回、その後に実の親と合流できたのか、無事に育ったのかは確認できませんでした。
さらに、もう1羽のヒナそのままは巣に残り、次第に活発に歩き回るようになりました。
母タカはそのたびに、ヒナを自分の腹の下へ戻そうとしました。
ここまでは、異種のヒナを自分の子として世話しているように見えます。
ところが、ガンのヒナが母タカの背中によじ登った後、行動は一変しました。
母タカはひなをくちばしで捕らえ、そのまま殺して食べてしまったのです。
背中に登ったことが攻撃の直接的な原因だったと証明されたわけではありません。
それでも、それまでの抱雛行動から捕食行動へ突然切り替わる瞬間が映像に残されたことは、親鳥による異種のひなの認識がどのように変化するのかを考えるうえで非常に興味深い記録です。
【エジプトガンのヒナが母タカの背中に乗ろうとした際の画像がこちら】
さらに、巣に残されていたカンムリクマタカ自身の卵は、残念ながら孵化しませんでした。
後に卵殻は割れましたが、中にヒナの姿は確認されず、この繁殖ではタカ自身の子も育たなかったのです。
今回の結末は、1羽が巣から飛び降り、1羽が捕食され、タカの卵も孵化しないという、すべての鳥にとって厳しいものとなりました。
しかし、この事例の意味は珍しい動物行動だけにとどまりません。
エジプトガンが外来種として定着した地域では、在来の猛禽類と営巣場所をめぐって競争することがあります。
異種の卵を見分けて排除できない猛禽類では、抱卵や子育てに時間を費やした末に繁殖へ失敗する可能性もあります。
ただし今回の研究は、1つの巣で起きた単一事例の報告です。
カンムリクマタカが常に他種の卵を受け入れると一般化することはできません。
それでも、巨大な鉤爪を持つ捕食者が小さなガンのヒナを一時は温かく抱き、やがて獲物として食べてしまった記録は、子育て行動と捕食行動の境界が、私たちの想像以上に不安定であることを物語っています。
































