15分で眠くなったため「酸素ボンベ」まで追加
アイソレーターが外の世界を徹底的に遮ったことで、新たな問題が起こりました。
ガーンズバック氏によると、アイソレーターを15分以上使用すると、装着者が次第に眠くなったのです。
そこで彼が追加したのが、小型の酸素タンクでした。
「チューブを通してヘルメット内に酸素を送り込むことで呼吸が増え、装着者が活気づく」とガーンズバック氏は説明しています。
そして、この仕組みなら重要な仕事を短時間で終えられ、「アイソレーターは価値のある投資になる」とまで評価しました。
ただし、こうした効果は科学的な比較実験によって確かめられたものではありません。
アイソレーターの有無で集中時間や作業効率がどう変わるかを調べたデータは示されていないのです。
また、現代の医学的な視点では酸素装置にも問題があります。
英国の麻酔科医ダニエル・ファネル氏は、「十分な酸素の流量と排気がなければ、吐き出した二酸化炭素が装置内に残り、次の呼吸で再び吸い込む危険がある」と指摘しています。
つまり酸素を送り込むだけでは、安全な呼吸環境になるとは限りません。
結局、アイソレーターが一般的な仕事道具として定着することはありませんでした。
しかし現在も私たちは、ノイズキャンセリングヘッドホンを着け、スマートフォンの通知を切り、SNSやウェブサイトを遮断して集中しようとします。
方法は変わっても、注意を奪う刺激を環境から減らそうとする発想には共通するものがあります。
世界を遮断する巨大なヘルメットという解決策は極端でしたが、アイソレーターは「集中したいのに気が散る」という悩みが、デジタル時代よりはるか以前から人間につきまとっていたことを物語っています。


































