電子機器の廃熱も冷却源に、「熱で冷やす」装置を開発
電子機器の廃熱も冷却源に、「熱で冷やす」装置を開発 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部
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電子機器の廃熱も冷却源に、「熱で冷やす」装置を開発

2026.09.08 23:27:55 Tuesday

夜、長い動画の書き出しを終えたノートパソコンの底に手を当てると、じんわり熱くなっています。

この熱は捨てるしかないもので、冷やす道具の側に回ることはないように思えます。

ドイツのカールスルーエ工科大学と筑波大学の研究チームは、2枚の薄い形状記憶合金の膜を組み合わせ、冷媒を引っ張る力を電気でなく熱でまかなう試作機を作りました。

片方の膜は熱を受けると縮んで、もう片方を引っ張ります。引っ張られた側の膜が冷たさを作る役目です。

将来は、パソコンなどの電子機器が出す廃熱を、自分を冷やす動力に回せる可能性があります。

熱で動いた膜がどれほどの温度差を生んだのかは、研究チームが2通りの熱源で確かめています。

研究内容の詳細は2026年8月28日に『Nature Energy』にて発表されました

Solid-state cooler uses heat to make things cold https://newatlas.com/energy/solid-state-cooler-heat-cold/
Heat-driven elastocaloric cooling with shape memory films https://doi.org/10.1038/s41560-026-02122-6

引っ張ると熱を出し、緩めると冷える「形状記憶合金」

引っ張ると熱を出し、緩めると冷える「形状記憶合金」
引っ張ると熱を出し、緩めると冷える「形状記憶合金」 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

冷蔵庫やエアコンは、気体の冷媒を圧縮機で押し縮めて熱くし、その熱を外へ捨ててから膨らませて冷やす、という往復で動いています。

気体の代わりに固体を冷媒にする方法もあり、外から刺激を与えると温度が変わる材料を使います。

今回の主役は、力を加えると温度が変わる「形状記憶合金」です。ニッケルとチタンを主成分とするこの合金は、引っ張ると熱を出し、緩めると冷えます。

熱が出るのは、引っ張られた拍子に内部の結晶の並びが切り替わるからです。その熱を外へ逃がしてから力を緩めると結晶は元の並びに戻り、今度は周りから熱を吸って合金が冷えます。

この往復を続ければ、合金が気体の冷媒の代わりになります。

従来の試作機で引っかかっていたのは、合金を何度も引っ張る大きな力の出どころです。そこは電気で動くモーターや油圧に頼っていて、冷媒を固体に変えても装置を動かすのは電気のままでした。

研究チームが試したのは、その引っ張り役を電気でなく熱にやらせる方法でした。

膜が膜を引っ張る、電気を使わない「引っ張り役」

膜が膜を引っ張る、電気を使わない「引っ張り役」
膜が膜を引っ張る、電気を使わない「引っ張り役」 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

研究チームは、引っ張り役にも形状記憶合金の膜を使いました。

試作機の膜は2枚で、駆動役はチタンとニッケルの合金で厚さ22マイクロメートル、冷媒役はそこに鉄を加えた合金で厚さ26.5マイクロメートルです。

駆動役の膜は温めると縮んで大きな力を出し、冷えると緩みます。結合された冷媒役の膜は、引っ張られて熱を放熱板へ逃がし、駆動役が緩むと熱を吸って冷えます。

駆動役をもう一度温めれば、次のサイクルが始まります。2枚の膜は、力は伝え合うけれど熱は伝わりにくいように結合されています。

冷媒役の膜だけを引っ張って調べると、周りと熱をやり取りしない条件で膜の温度は19.4度変わりました。これは膜1枚の温度変化で、装置の両側にできる温度差とは別の量です。

最初の実験では駆動役の膜を電流で温め、膜の温度を平均で最高86℃まで上げると装置は動きました。

装置全体の温度差は、20回の往復のあとで4.0度に落ち着きました。膜そのものに付いた差は12.9度で、測る対象で数字が変わります。

次の実験では電流をやめ、130℃に保った固体の熱源を駆動役に押し当てて動かしました。それでも装置は止まらず、装置全体で2.2度の温度差を保ちました。

冷却能力は2.09ミリワットでした。冷媒を引っ張る力を熱から取り出し、冷却のサイクルを回せることを、実験で確かめたことになります。

ただし、外部の熱で動かしたときの冷やす力はミリワット級で、今のパソコンの冷却が処理している熱に比べるとはるかに小さい数字です。

放熱板などを前後に動かす部分には電気で動く装置が残っていて、装置全体が電気いらずになったわけでもありません。

カールスルーエ工科大学も、今回の装置は仕組みが働くかを確かめる段階のものだとしています。

それでも、電動の装置が担っていた「引っ張る力」を熱から取り出せたことは、廃熱や太陽熱で動き、電気の消費を抑えた冷却への一歩です。次の課題は、ミリワット級の冷やす力をどこまで引き上げられるかです。

電子機器の廃熱も冷却源に、「熱で冷やす」装置を開発のコメント

ゲスト

>力を緩めると結晶は元の並びに戻り、今度は周りから熱を吸って合金が冷えます。

じゃなく、
「力を緩めると結晶は元の並びに戻り、合金が冷えるから、今度は周りから熱を吸います。」
の間違いだろ!

    ゲスト

    いや、間違っているのはそこじゃない。元の英文は以下。

    「Allowing the heat to escape, then removing the load, causes a reverse phase transition that absorbs heat, making the material colder. Repeating the cycle turns the alloy into a solid-state refrigerant.」

    直訳すれば「力を緩めることが熱を吸収するような結晶の並びを元に戻すことを引き起こし、その結果その物質をより冷やす。このサイクルを繰り返すことがその合金を個体冷媒にする。」

    つまり正しい日本語の解釈は以下
    ・「冷える(colder)」のは合金(alloy)ではなく物質(the material)」
    ・「合金(alloy)」は「冷える(colder)」のではなく「個体冷媒(solid-state refrigerant)になる(turn into)」
    ・「物質(the material)」はこの文より前に出てくる「nickel-titanium-based materials」の事を指している
    要はこの文では「合金が冷えます」とは言っていないのである。

    この文はあくまで「合金(alloy)」に含まれる「nickel-titanium-based materials」が力を緩めると結晶が元に戻り「冷える(colder)」ので「合金(alloy)」全体としては「個体冷媒(solid-state refrigerant)になる(turn into)」というのが元の英文の意味である。

    ゲスト

    元の英文だって???

    >力を緩めると結晶は元の並びに戻り、今度は周りから熱を吸って合金が冷えます。

    というのは『Nature Energy』に発表された研究内容を読んだ日本人のライターがその内容を解釈して書いた文面ですよ。
    だから

    >「Allowing the heat to escape, then removing the load, causes a reverse phase transition that absorbs heat, making the material colder. Repeating the cycle turns the alloy into a solid-state refrigerant.」

    というのは、

    >力を緩めると結晶は元の並びに戻り、今度は周りから熱を吸って合金が冷えます。

    の元の文そのものではありませんし、

    >この文では「合金が冷えます」とは言っていないのである。

    と言うのも的外れです。

    あと、「正しい日本語」というのなら「solid-state refrigerant」は「個体冷媒」じゃなく「固体冷媒」です。

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