膜が膜を引っ張る、電気を使わない「引っ張り役」

研究チームは、引っ張り役にも形状記憶合金の膜を使いました。
試作機の膜は2枚で、駆動役はチタンとニッケルの合金で厚さ22マイクロメートル、冷媒役はそこに鉄を加えた合金で厚さ26.5マイクロメートルです。
駆動役の膜は温めると縮んで大きな力を出し、冷えると緩みます。結合された冷媒役の膜は、引っ張られて熱を放熱板へ逃がし、駆動役が緩むと熱を吸って冷えます。
駆動役をもう一度温めれば、次のサイクルが始まります。2枚の膜は、力は伝え合うけれど熱は伝わりにくいように結合されています。
冷媒役の膜だけを引っ張って調べると、周りと熱をやり取りしない条件で膜の温度は19.4度変わりました。これは膜1枚の温度変化で、装置の両側にできる温度差とは別の量です。
最初の実験では駆動役の膜を電流で温め、膜の温度を平均で最高86℃まで上げると装置は動きました。
装置全体の温度差は、20回の往復のあとで4.0度に落ち着きました。膜そのものに付いた差は12.9度で、測る対象で数字が変わります。
次の実験では電流をやめ、130℃に保った固体の熱源を駆動役に押し当てて動かしました。それでも装置は止まらず、装置全体で2.2度の温度差を保ちました。
冷却能力は2.09ミリワットでした。冷媒を引っ張る力を熱から取り出し、冷却のサイクルを回せることを、実験で確かめたことになります。
ただし、外部の熱で動かしたときの冷やす力はミリワット級で、今のパソコンの冷却が処理している熱に比べるとはるかに小さい数字です。
放熱板などを前後に動かす部分には電気で動く装置が残っていて、装置全体が電気いらずになったわけでもありません。
カールスルーエ工科大学も、今回の装置は仕組みが働くかを確かめる段階のものだとしています。
それでも、電動の装置が担っていた「引っ張る力」を熱から取り出せたことは、廃熱や太陽熱で動き、電気の消費を抑えた冷却への一歩です。次の課題は、ミリワット級の冷やす力をどこまで引き上げられるかです。





























