ゾウの「薬探し」は私たちに何をもたらす?

研究チームは、すでに証拠集めを始めています。
いっしょに調べた地元の人たちにカメラを渡して、目にしたゾウの行動を記録してもらっているのです。
ゾウが食べる植物そのものの分析も進めています。ゾウが先に見つけていたかもしれない新しい薬を探すためです。
ハンブルクのベルンハルト・ノホト熱帯医学研究所のファビアン・シュルツ博士は、「地元の知恵が、私たちに地図をくれました」と話します。
博士たちが次に調べたいことは2つあります。ゾウを追いかけて、ある体の状態のときに決まった植物を選んでいるのかどうか。そして、その植物に体に効くはたらきがあるのかどうかです。
今はまだ地図を手に入れた段階で、宝が本当に埋まっているかどうかはこれからです。
動物が自分で手当てをするという話は、ゾウが初めてではありません。
ハフマン教授によると、蚊やハエ、ミツバチから、アフリカやアジアの大型類人猿(チンパンジーやオランウータンなど)まで、多くの動物が自分で手当てをすることが知られているそうです。
ゾウについても、3世紀のはじめに古代ローマの作家アイリアノスが記録を残しています。槍と矢で傷ついたゾウがオリーブの花と油を口にして、すっかり回復したというのです。
人はずいぶん昔から、動物の「手当て」に目をとめてきたわけです。
ハフマン教授は、「新しい動物を調べるたびに、私たち自身の薬の歴史への理解も深まってきた」と話します。
ブラウン大学のエロディ・フライマン博士は、この研究が別の問いも投げかけていると言います。
森が壊されると、動物も人間も、元気に生きるために必要な薬を失ってしまうのではないか、という問いです。
博士によると、薬局で買う薬の多くは、木や藻、キノコなどの菌類、サンゴ礁の生き物がつくる物質から生まれてきました。
森を守って「自然の薬局」を残しておけば、いつか私たちを救う新しい薬を見つけられるかもしれません。それはゾウにとっても私たちにとっても得になる、というのが博士の考えです。
もしゾウの薬箱の中身が解き明かされたら、未来の薬の箱には「ゾウのおすすめ」と書かれる日が来るかもしれません。



























