「満足感」と「恋を続ける気持ち」は別に動いていた

なぜ交際の浅い段階で今の恋人を思い描くと、満足度が上がるのに、続ける気持ちは下がるのでしょうか?
満足度が上がるなら、続けていく気持ちも同時に上がりそうなものです。
ですが研究者たちは、満足と続ける気持ちは似ているようで測っているものが違うと考えています。
満足度が見ているのは、今この瞬間、この人といてどれだけ満たされているかです。
続けようという気持ちのほうは、これから先も時間や労力を注いでいくという、未来に向けた構えです。
この二つはよく連動しますが、別々に動くこともあります。
特に付き合って間もないころは、楽しさは十分でも、未来への決意はまだ固まりきっていません。
研究チームは、その決意を揺さぶったのが、ほかならぬ今の恋人との幸せな思い出だったのではないかと考えています。
思い出の中の場面は、楽しいまま幕を閉じた、いわば「うまく完結した過去」です。
その場面を鮮やかに思い浮かべると、まだ何ひとつ決まっていない「この先」との差がくっきりと浮かび上がります。
あのときは本当に楽しかったが、この先もずっとこうだろうか?
関係への満足度は上がっているのに、未来に向けた決意だけがぐらつく状態です。
放送中の連続ドラマで神回を見返したあと、「この先、これを超える回は来るのだろうか」とそわそわしてしまう感覚に近いかもしれません。
一方で付き合いが3年近くになれば、決意の土台はすでに固まっていて、ひとつの思い出にここまで揺さぶられることはないのかもしれません。
今の恋人の思い出で複雑な気持ちが多かったことについても、研究チームは説明の手がかりを示しています。
同じ出来事でも、それをどう受け止めるかで気持ちは変わるという考え方(感情の評価理論)です。
今の恋人との幸せな記憶は、思い出すたびに二つの顔を見せます。
「こんなに楽しい時間があった」という顔と、「あの日はもう戻ってこない」という顔です。
前者として受け止めればうれしさが残りますが、後者として受け止めれば、楽しい記憶のあとから切なさが追いかけてきます。
そして、付き合いが浅くこの先にどれだけ楽しい日が待っているかがまだ見えないうちは、後者の顔のほうが目につきやすいのかもしれません。
もっとも、今回の研究が捉えたのは指示を受けて思い出した懐かしさであり、日常の中でふと湧いてくる懐かしさも同じように働くかどうかは不明です。
また調査の母数についても最終的な結論を出すには、今後増していく必要もあります。
それでも、元恋人との良い思い出を振り返ることは必ずしも今の恋を冷まさないことを、研究者たち自身の予想を覆す形で示した意味は小さくありません。
この知見は、恋人どうしが思い出とどう付き合っていくかを考えるヒントにもなりそうです。
過去の恋を消し去ることだけが、今の恋を大切にする方法ではないのかもしれません。



























