・南アフリカの洞窟で、私たちの祖先が約73,000年前に描いたとされる「世界最古の線画」が発見される
・これまで人の「創造性」は約40,000年前に発達したと考えられており、その常識が覆る可能性がある
一見「授業に飽きた生徒のラクガキ」っぽいですが…。
南アフリカのブロンボス洞窟にて、約73,000年前に描かれたとみられる「線画」が発見されました。線画は石の上に「網目状」に描かれており、線画としては「世界最古のもの」と考えられます。この発見により、人の「創造性」の進化についての理解がより深まるでしょう。
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0514-3
これまで、初期の人類がヒトや動物などの「抽象的な絵」を描きはじめたのはおよそ40,000年前とみられていました。これは人類が大量にアフリカからヨーロッパへと移住していった時期と重なります。
そのため、これまで多くの研究者たちはこの「大移動」が人類の「創造性」のルネサンス、つまり発展のきっかけとなったと考えてきました。しかし、今回発見されたこの抽象的な「ラクガキ」は、「大移動」の30,000年以上も前に、アフリカで暮らしていた私たちの祖先が「シンボリック・アート」を描ける能力を持っていたことを示唆しているのです。
現在、この「線画」については考古学者の間で様々な意見が飛び交っています。描かれた時期の算定について疑問を持つ人もいれば、その線画自体が「シンボリックな思考」に基づいて描かれたのかを疑問視する声もあります。
しかし、研究者たちはこの網目状の線画が「意図的に」描かれたものだと主張します。様々な技術を用いてその線画を再現し、実際に発見されたものと比較検討することにより、今回の発見が「本物」であることを結論づけたのです。
すなわちこの発見により、人間誰しもが少なからず持っている「芸術的な感覚」は、私たちが思っていたよりもずっと昔に、私たちの祖先が身につけたものであることが示されたのです。